2021年11月12日公開

皮膚を売った男

THE MAN WHO SOLD HIS SKIN

1042021年11月12日公開
皮膚を売った男
3.8

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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(25件)


  • 一人旅

    4.0

    生きる芸術となった男

    カウテール・ベン・ハニア監督作。 ベルギーの現代アーティスト:ヴィム・デルボアのアート作品「TIM」にインスパイアされたカウテール・ベン・ハニア監督が挑む寓話的人間ドラマの野心作で、本作は第93回アカデミー賞国際長編映画賞にチュニジア代表としてノミネートされています。 戦禍のシリアで不当逮捕されレバノンへと脱出したシリア難民の男:サムが、ある芸術家との間で大金と自由と引き換えに背中にタトゥーを施し、自分自身が気鋭のアート作品となって美術館に展示されるという内容の奇妙な契約を交わすというお話で、離れ離れになったシリア人の恋人との関係性のゆくえを軸に、世界が注目する現代アートと化した男の数奇な運命を見つめていきます。 殺戮が繰り返される中東シリアの惨状をよそに、見世物的にその芸術的価値を高めていくシリア難民の男に魅了される欧米世界の住民の思考と価値観を皮肉った作品で、男が難民となった現実の悲惨な背景を見ずに、難民という既知の事実の上に成り立つ稀有な“芸術作品”としての人工的な価値に関心を寄せる人々の、人間と世界に対する無関心と冷淡な本質をユーモアを交えながら浮かび上がらせています。 本作が長編映画初主演となったシリア出身:ヤヤ・マヘイニが生身の人間ではなくアート作品として人々に認知されていく主人公の難民を妙演していますし、恋人役のディア・リアンの透き通った美しさが目の保養になります。

  • mai********

    4.0

    自由と不自由の狭間で

    自分をキャンバスにしてまで手に入れた自由。 …だったはずなのに… 確かに出入国は自由になった。 自分自身が芸術作品ゆえに得られた成果。 逃亡も、亡命もしなくて済む境遇は争乱に巻き込まれた恐怖を考えたら はるかに安全で羽を伸ばすことが出来る自由さがある。 それなのに、感じたのは不自由さ。 芸術作品ゆえの拘束時間。 芸術作品ゆえの体調管理。 芸術作品ゆえの売買商品。 そこには自分の意思はない。 金持ちの道楽の醜悪な趣味に付き合わされることになるし 奇異の目で見つめられ続ける事の薄気味悪さも耐えなければならない。 手にしたはずの自由は、本当に自由だったのか? 恋しい人を求めての賭けは、恋する事もままならない結果になった事で 一応の結果と納得をみたのではないだろうか? 自由とは誰かの思惑や縛りの中でのものではない。 自分の内なる自由をしっかりと守れる環境に居る事こそが自由。 主人公が経験した時間は無駄ではなかった。 経験したからこそ、より広い世界が見渡せるようになっただろうから… 2021年12月11日シネマテークたかさきで鑑賞

  • 重村牧男

    3.0

    芸術と人権の狭間

    表現の自由のと人権問題は近年常に問題視される。 人権的な差別を受けている当事者が訴えるならまだしもだが、 関係のない第三者が正義感を振りかざし文句を言ってくるから厄介である。 この映画でも契約者本人が文句を言うのではなく、 人権派団体が文句を言ってくる。 日本でもいくつものテレビ作品や書籍達が闇に葬りさられ封印された。 主人公はシリア人。 皮膚を売るって人身売買の話?と思っていたが、 芸術品として皮膚をパフォーマンスした男の話。 全ての規制から逃れ、男は自由の身になれるのか?というのがテーマ。 なかなか興味深い問題を提起をする作品。 因みにチュニジアの作品です。

  • nn1********

    4.0

    一口寸評

    その美術館に展示されていたのは、タトゥーを施された男性の背中だった。 シリア難民のサム(ヤヤ・マヘイニ)は、逃亡先のレバノンで出会った現代美術の巨匠に、彼自身がアート作品になれば、大金と渡航の自由が手に入ると説得される。 彼は、ベルギーに移住した恋人に会いたい一心で契約するが…。 生身の人間を美術品としてオークションで売買するとは、上流階級目線の危うい発想だ。 当人の気がふれそうになるのも当たり前か。 ただ、もっと人の尊厳や移民・格差問題に迫るのかと思いきや、ドンデン返しのあるエンタメ劇に収斂、肩透かしを喰らった。 素材は実話に近いらしいが、何だかもったいない。 監督は、チュニジア出身の女性、今年は実に多い。 先日開催された東京国際映画祭のグランプリも、コソボの女性監督の作品だった。 出演していることを知らずあっと驚いたのが、モニカ・ベルッチ様。 アラ還で豊満になられ貫禄十分、存在感も十分でこちらは満足。

  • HY

    5.0

    冒頭から「これは絶対名作」と直感

    冒頭から釘付け、 そしてその冒頭シーンは重要。 画角や間合い起承転結、 他の作品も見たくなりました。 彼女が弁護士の前で翻訳する場面、 個人的には一番ステキなシーンでした。 ラストはうーん、BADでもHAPPYでも もはやどっちでも受け入れられるけど、 これでいいのかな、 その先の事は誰にもわからないし。 みょうにはまって、 生涯忘れられない、上位にくる一本でした。

  • mat********

    1.0

    ネタバレ最後に悪は勝つ

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • まんぼう

    4.0

    重たい問題を扱ったエンタメ作品

    シリアのラッカ出身の男がある事から不当に命を脅かされる。 逃れる手段として提案されたのが自分の背中にビザの刺青をいれてアート作品となる事。 アート作品ならば世界中を行き来できる。有名にもなれる。 やがて男は作品として美術館で展示されるようになり、男自身もちょっと調子に乗って我儘に振舞うようになる。 本来は好きな女に会いに行きたいだけの動機だったのにいつの間にか高級ホテル住まいでお金に不自由しなくなると横暴になる。 では、この背中の刺青は芸術作品なのか?作品の売買は人身売買とならないのか?という問題を提起して進んで行きます。 ラストは衝撃的な悲劇となります・・・と思ったら。 なるほどその手があったかっ!ていう面白い展開でした。 主人公のサム役の方はシリア出身の弁護士が本業の方のようです。 短編映画に出た事はあるようですが本格的な長編かつ主役という事ですが素晴らしい演技でした。 なぜが、サムをマネージメントする役でモニカ・ベルッチが出てる。

  • j9i********

    4.0

    スイスって人身売買ok?

    日本では現代アートと呼ばれる作品の中でも、強い社会批判を迸らせている作品は拒絶されやすい。見て考えるというプロセスを拒否する。その作品を見る者の反応すら作品の一部という作品は日本では馴染まない。某少女像が最も顕著な例だろう。 映画は、ベルギーの実在の現代アートに触発されて作られた作品だ。 ひとりの人間が生モノのアートとして商品として成るということのあれこれが実に興味深かった。 もちろん、けして愉快な気持ちにはならない。 最後まで愉快ではなかった。 人種差別や搾取といった攻撃的な批判や同胞からも白眼視されるだろうというリスクも当然描かれる。作品が生きた人間の一部であることから、売買となると人身売買にあたるのではという法的問題もやはり描かれる。 しかし、彼が作品として存在することそのものよりも、それの存在を取り巻く人々鑑賞する人々よりも、作品に付された保険の話よりも、作品を購入した白人夫婦の姿よりも、作品を競る人々の姿よりも、一番ストレスだったことは。 彼女です。 恋は盲目、恋の暴走とはよく言いますが。 アレは嫌な女だよ。タチが悪いよ。 目ぇ覚せってグーで殴りたくなったね。 最後さ、あんたの手を取ったのだって打算だよきっと。元外交官の亭主を棄ててあんたに乗り換えたのだって打算だよ、って言いたいね。いーらいーらしたわ。 もしや、このいらいらすら映画というアートの一部なのかしら。わざとあのキャラなの? アーティストのおっちゃんは天才っぽさが出てた。VISAか。よくわかる。おっちゃんがアート界をぶいぶいいわしているのがよくわかる。観たいなって思わせる。モデルとなったアーティストさんの作品も観たくなった。 ちなみにアーティストの仕事のパートナーがモニカ・ベルッチ姐様だったわ。相変わらず色っぽかったわ。 今、日本人でVISAの重みを知る人はどれほどいるかな。仕事で取る人は別として。 彼に彫られたVISAがとてもとても重く感じた。 シリア人の苦悩葛藤、難民となった諸民族への眼差し、彼らに対する欧米諸国の人々の心の姿をアートのかたちで問いかける。 幼い子の問いかけは常に鋭い。よい手法だ。 ダッカに帰る。主人公の言葉が重い。 多くの同胞がいつかダッカに帰ると強く願っているだろう。 PS 展示品修復中の立て看板は笑った。 DNAから培養ってどれくらい時間いるのかな。 そんなに簡単に出来るの? メロドラマ部分がイラっとウザかったけど、人間アート商品ってどう扱われんの、という部分が興味深かったので☆は甘め。

  • Dr.Hawk

    3.0

    ネタバレサムを殴った方が安くついた夫のストレート

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • りゃんひさ

    4.0

    ネタバレアート映画ならぬ、アッと映画ですね

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • ron********

    4.0

    意外にエンタメ度数高めの作品

    第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネート、主演のヤヤ・マへイニが第77回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門男優賞を受賞した人間ドラマ。 芸術家ヴィム・デルポア氏のタトゥー作品『TIM』から着想を得ている。 ラッカに住むサムとアビールのカップルはシリア内戦の影響で引き裂かれてしまう。 サムがレバノンに逃げている間、アビールは家族により裕福な男との結婚を推し進められ、ブリュッセルへの移住を迫られる。 彼女を取り戻す資金とヨーロッパ移住ビザを手に入れるため、サムは物議を醸す現代アーティストに接触して自分の背中にタトゥーを入れる契約を交わす。 サムは生ける芸術作品になって美術館に展示されれるが、次第に自分の肌以上のものを売ってしまったことに気付いていく。 監督は、「Beauty and the Dogs」がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され音響賞を受賞したカウテール・ベン・ハニア。 出演は他に、「007 スペクター」などのモニカ・ベルッチ、ディア・リアンなど。 原題「L’Homme Qui Avait Vendu Sa Peau」 映倫区分G 2020年作品 チュニジア=フランス=ベルギー=スウェーデン=ドイツ=カタール=サウジアラビア合作映画 配給はクロックワークス 上映時間104分 不法逮捕によってシリア難民となった男が恋人に会うために、自分の背中にタトゥーを入れ、自らがアート作品となり、大金と自由を手に入れようとする物語。 なかなか面白かった。 タイトルからして、ホラーテイストなのかなと思ってたら全然違った。 シリア難民の苦悩が描かれた重いテーマの作品です。 でも、意外に見せ方がそんなに重くなく、展開もなかなかスタイリッシュで面白く仕上がっています。 明るいタッチではないですが、なかなかエンタメ度数高めの作品です。 物語自体も興味深い内容。 幻想的な空気を醸す不思議な感覚になる作品です。 それに、シンメトリーが多様されていて絵的にもとても美しい。 ですが、前半はちょっとゆっくりめ。 ちょっと間延びしていたかなぁ。 もう少しで退屈と感じそうだった時に、グングン物語が動いていく。 ラストの急展開には驚かされた。 ネタバレになるので言えませんが、ラストはかなりホッとしました。 未だ戦乱の渦中にあるシリアという国だからこそ、主人公のアート作品なるという行動に意味が生まれる。 生きている人間をアート作品にすることの姿勢や意図、各国々の捉え方、人権問題にもちゃんと触れている。 そこが描かれて、ようやく観ているこちらも「これはそんな簡単な事じゃないぞ」と気づかされる。 映画の物語として、あくまでフィクションと軽く観ていたけど、「これは物凄く大変な問題だぞ」と気づいた時、この映画のテーマが一気に見えてきて圧倒される。 その辺りの見せ方、盛り上げ方が上手い。 ハリウッド映画のような万人ウケするエンタメ度かなり高めの映画ではないけれど、中盤からラスト、そして急展開の持っていき方は万人を惹きつけるエンタメがある。 モニカ・ベルッチは、だいぶ歳をとりましたね。。。 美しく魅力的で悪魔的な美女の役は、もうそろそろ限界かもしれない。 今作でギリギリって感じでした。 でも、やはり華があっていいですね。 ■興行収入予想 興行的には、現段階では上映館数15館と少ない。 11月12日(金)からの公開中。 ミニシアターでのアート系単館ロードショー作品です。 イタリアでは2020年9月4日に公開。 日本では上映館数が少なすぎますね。 あまり話題になっていない。 初登場圏外スタートと予想。 ミニシアターランキングでは上位に入るでしょうか。 最終興行収入は2300万円くらいか。 星3つ半(5点満点) ★★★☆

  • mat********

    2.0

    主人公たちはアタマおかしいんじゃないか

    評判の高い作品なので観ておこうと。 確かにアイデアは面白いし、なぜかモニカ・ベルッチという有名俳優も出ている。 でもなあ、主人公たちに共感できないんだよなあ。 刺青のキャンバスとして自分の背中を提供する契約をした主人公サム。代わりに自由とカネを手にする。 けれどここからが良くない。 見返りを貰って約束したにもかかわらずサムは何かにつけて自我を出す。出さずにはいられない性格なのだ。背中の作品だけが有名になることに納得がいかない。背中の持ち主であるサム自身も有名でありたいと望む。 これはグラビアアイドルやセクシー俳優と似ている。 読者は顔や演技力なんてどうでもいいのだ。みたいのはカラダ。カラダの性的魅力と引き換えにカネをもらう。これと同じ。 割り切れたのか、途中からはそういう自我は出さなくなるが。 後に理由が分かるが、サムの恋人アビールはサムが捕まったら別の男と結婚する。しかもサムが自由になるとサムと連絡を取り合う。これって浮気やん。 映画の中ではアビールの夫がサムともめて美術品を壊して訴えられることから悪者みたいに描かれる。でも悪いのはサムやん。 観ていて「こいつらおかしいんちゃうか」とずっと思ってた。 ラストのアイデアはナイス。これはよかった。 映像がしばしばぼかされる。 ラストも下半身がぼけていた(ピントがあっていない)。 意図的なのか?

  • mrt********

    3.0

    ロマンスとブラックユーモア

    内戦の続くシリア国籍を持つ男性が、「自由に」外国へ行く権利を得るために自らがアート作品になる話です。 主人公サムがタトゥーを入れるか迷っていた時、そのアーティストを動画サイトで調べたら、「価値の無い対象 (Worthless object) に私がサインすることで価値が生まれる」みたいなことを言っていて、それだけでも何だか可笑しいんですが、このブラックユーモアこそがこの映画の真骨頂。 詳しくは書きませんが、最後、ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』ばりのどんでん返しもあります。エンタメとしても優れていると思います。 文学要素はやや少なめかな。でも面白かったです。 何より題材に独自性があり、そこからちゃんと話を展開させているところが凄いです。凡人がやったら失速しそう。 主人公サムの恋人アビールは、サムと一緒にいる時にだけぐっと魅力的になります。女優の演技力がすごいのか、私が女性に騙されやすいだけなのか(笑) 良い映画でした!

  • bakeneko

    5.0

    ネタバレ”Dammi i colori!”♪

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • wxj********

    4.0

    ネタバレ難民問題に絡めて真の自由を問う

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • fpd********

    3.0

    評価が高かったので観にいったけれど

    正直なところ、私にはよくわかりませんでした。いろいろなことを訴えている、それは何となくわかるのですが、心を動かされることもなく、ただ、”合わなかった”ということなのかもしれません。

  • dkf********

    3.0

    秀作だが、もうワンパンチ欲しい!

    チュニジア映画初体験にして、いきなりこのハイレベル。どこの国にも才能ある監督と優れた映画は存在するものだ。 査証(ビザ)の取れないシリア難民の背中にビザのタトゥーを入れるというシニカルなアイデアが面白い。演じるチュニジア人俳優の雰囲気ある好演のおかげで通俗性のあるエンタメ作品に仕上がっており、アカデミー国際長編映画賞ノミネートも納得の佳作である。 ただ、こんな個性的な視点で難民問題を風刺するなら、ラブストーリー中心でなく、もっと社会ドラマに比重を置いた方がテーマが生きたのでは?と思う点と、ラストはやっぱり「あそこ」で終わった方がストーリーとして収まりが良かったような印象があり、傑作まであとワンパンチ欲しかったかなというのが個人的感想。その点、あえて辛めの評価に留めた。 それにしても、あの貫禄たっぷりのブロンド女がモニカ・ベルッチだとエンドクレジットで知った時の驚きたるや!なにやら別の意味で最近凄い存在感のある女優になってきた気がするなあ…

  • Kainage_Mondo

    4.0

    題名の威力で突っ走る。

    食い物を漁りにパーティーに紛れ込んでいた サム ( ヤヤ・マヘイニ 以下敬称略 ) に声を掛けた ソラヤ なる女性が モニカ・ベルッチ であることに気付いたときの 驚き と来たらね ! 後段、サム が電話で彼女のことを 元恋人の アビール ( ディア・リアン ) に話すシーンはあったが、結局、中心的な役割を担うことなく終わってしまった。最近作でなお魅力を放っていた 2016年「オン・ザ・ミルキー・ロード」が懐かしかったね~! と、のっけから脱線だが、本作。 事実からヒントを得たとは言うものの、背中に施されたタトゥーが美術品として通用してしまう、と云う奇想天外な筋立て。そのタトゥーが Schengen Visa を図柄としていたことで、政治的な意図があるような、シリア難民の苦境とシリアの現状を啓蒙する目的を持っているかのような、“思わせぶり” が全編に溢れているのだった。 オークション会場の描写とそれに続く事件をクライマックスに設え、その後は、科学的と云うには余りに綱渡りのストーリー展開なのだが、そんなこと可能なの ?? と、考える暇を与えないところが巧かった。衝撃の結末であることが、却って本作の政治的なメッセージを弱めるという皮肉な結末になったと思う。

  • ジュン一

    4.0

    なんだか背中がむず痒くなる

    冒頭のシーンで、物語のおおよその帰結の予想は付く。 実際のストーリーもそれに向かうように進み、 思った通りね、と にんまり悦に入っていた。 が、終盤に繰り出された展開は 予想の遥かに上を行くもの。 その素晴らしさに、良い意味での 開いた口が塞がらない状態に。 自分が幼い頃、いや長じても三十路前迄は 銭湯に行くことも多く、身体に紋々を入れた人もそこそこ見かけた。 中には肉襦袢ですかい?と、全身に彫りが入ったおじさんもおり、 そうした人に限って妙に気さくに話しかけて来た記憶。 しかしいつ頃からだろう、それらの外見に対して不寛容な反応が出始めたのは。 ある種の符丁として機能するわけだが、それだけでは是とも非とも 断ぜられないのは何とも難しいところだけど。 一方で、その表現を芸術として扱おうとの方向性は過去からもあり。 写真集も出版されているし、実在のそうした人を集め 出来栄えを見せて貰うとのイベントも開催されていたように思う。 勿論、国内よりも海外に於いて、当該者への興味は深い訳だが。 2000年から始まったシリアでの『バッシャール・アル=アサド』の政権は 次第に独裁の色を濃くし 国内での弾圧の強化、それに伴う内戦化と難民の発生、と 混迷の度は更に深まりつつある。 本作の主人公『サム』もその犠牲者の一人。 謂われなき迫害から隣国のヨルダンに逃れはしたものの、 恋人である『アビール』は体制側の駐ベルギー大使に結婚を迫られ ブリュッセルに移住してしまう。 全てを失った『サム』だが、やはり『アビール』への恋慕の情はは断ち難く、 現代美術家の提案を受け、自身の背中に刺青を、何とも皮肉にも 査証のそれを掘り、生けるアートして起死回生を図る。 分厚い契約書へのサインと引き換えに手に入れたのは 移動の自由と巨額の報酬。一方で持ち主の求めに応じて 背中を晒すとの不自由も併存する。 傍から見れば、人間らしい尊厳はどこに?との疑念も 自身の想いは果たして那辺に有るのか。 アートの世界は、ある種 やったもの勝ち。 斬新なアイディアや独自の表現を 他に先んじてモノすることが求められているわけで。 その意味で、人間そのものを作品とするとの趣旨は 一方で、その扱いにくさを含め、話題には事欠かぬ。 主人公がオークションされる場面では 思わず失笑するとともに、その異様さにも飽きれてしまう。 もっとも、彼がその時にとった行動は、 会場に居並ぶスノッブへの一つの意趣返し。 ここでは『バンクシー』の「シュレッダー事件」を想起してしまったのだが、 彼は失敗し、『サム』は成功する。 それは難民に対しての、或いは肌の色や、その名前に対しての 見事なレジスタンスとも取れるのだが。 もっとも、最後のシークエンスは更に示唆的。 例えば茶道具が元の持ち主が誰かにより箔が付き 価値が上がるのと同様、 アートは付加されるストリーにより価格が上昇する。 先に挙げた『バンクシー』の 〔少女と風船〕⇒〔愛はごみ箱の中に〕はその好例。 これにより作品の価値は急上昇し 所有者は巨万の富を得るのだが、 さてこのカラクリは、いったい何時から画策されていたのか? 実は鑑賞者が見せられていたのは、 壮大なミスディレクションなのかもしれない。

  • c********

    5.0

    芸術は爆発だ!

    恋愛と結婚 戦争とテロと難民問題 アートとは?アート作品の価値とは? 資本主義における人間の商品化 人間にとって自由とは? 関連が無さそうなこれらのことをひとつの鍋に放り込んでかき混ぜてじっくり煮込んでできたような作品です。 よくもまあこのようなユニークな作品を作ることができたなあというのが最初の感想です。 このような映画を作ることができるのであれば人間の想像力はまだまだ大丈夫だと思いました。 作品のタイトルはちょっと刺激的ですが、ベースは切ない恋愛ストーリーですので仲の良いお友達同士で観ても楽しめると思います。 岡本太郎氏の「芸術は爆発だ!」の言葉がこの作品のキャッチコピーにはピッタリだと思いました。

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