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MINAMATA―ミナマタ― (2020)

MINAMATA

監督
アンドリュー・レヴィタス
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  • みたログ 985

4.28 / 評価:843件

『MINAMATA』の不都合な真実

  • bot******** さん
  • 2021年10月24日 11時23分
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

俳優陣が素晴らしかったです。特に真田広之の熱演に感動しました。國村隼、浅野忠信、加瀬亮、カメラを教えてもらった少年、アコーディオンを弾く少年、うろちょろしている謎の男?も良かった。日本人からこれだけの演技を引き出す監督は凄いと思いました。もちろん、J・デップの控えめな演技も良かったです。

ただ、見終わった後に、変な感覚が残ります。
昨日、E・スミスとアイリーンを描いたノンフィクション「魂を撮ろう」(石井妙子 著)を読んで、その理由が判った気がしました。興味がある方はご一読をお勧めします。

1. チッソの社長の姿勢が変わったのは、患者さんとご家族達のグループが苦闘の末、勝ちとったもので、「LIFE」誌の記事(8ページ)が出たからではないです。もし、LIFEの記事が社長を変えた、と本気で考えていたら、それはちょっと怖いですね。
2.この夫妻は記事が出た6年後に離婚しています。ユージン・スミスにはロシア系アメリカ人の恋人が出来、本国に戻り彼女と一緒に暮らし、病気が悪化して亡くなります。アイリーンはその後、2回結婚しています。基本、環境活動の運動家であり、写真家としてはほとんど活動していません。離婚後現在に至るまで、ずっとスミス姓を名乗り続けているので、未亡人のような印象を受けますが、違います。ちなみに、昔の夫の姓を名乗り続けるのは、アメリカでは不自然なことではないそうです。
3.離婚する際に、二人の水俣での写真の著作権は、アイリーンが持つことになりました。世界に衝撃を与えた「入浴する智子と母」(通称「水俣のピエタ」)は、この20年間、著作権者のアイリーンから出版、発行の許可が出されてません。今回の映画の紹介する記事にも出していないみたいです。理由は、モデルの家族がこの写真で風評被害を受けており、その訴えをアイリーンが理解して、使用決定権をモデルご夫妻に委ねたとされています。ちなみに現在も公開を希望していないと、石井氏の本に書かれています。
4.ところが、映画「MINAMATA」では、このシーンが再現され、実際の写真も現像しているシーンで出てきます。家族に確認を取らずに、アイリーンさんが許可したそうです。ハリウッド映画なので、全世界で公開されます。写真集も再販されています。この矛盾した行動について、どこかで説明はされているのでしょうか?

そして私と上村さんとは、この写真はもう出さないと約束しています。(2000年 清里フォトアートミュージアム友の会・会報11号)
http://aileenarchive.or.jp/aileenarchive_jp/aboutus/interview.html

6.ラストに出てくる世界各地の環境被害の被害状況の訴えは、E・スミスの表現とは別物だと思います。ここでは世界中で公害にあった実在の人々が「可哀そうな」感じで出てきます。これも世界的に有名な写真になれば、水俣のモデルと同じ感情を持つことになります。「私たちは見世物じゃない」という事です。でも、報道写真はよりリアルで悲惨な写真を追い求めてしまいます。私はユージン・スミスはこの問題に気づいて、だからこそ、苦闘していたのだと思いました。

石井氏の著書で描かれている通り、E・スミスは自殺願望の強い、回りに迷惑をかけまくる人間だったのでしょう。でも、自分の仕事に対しては真摯に向かっていた凄い写真家だと思います。だから、人の心に残る写真を残せたのだと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=vgRlagztyUA
↑16分26秒~ 実子ちゃんの写真を撮っても表現できていないと悩む様子。

石井氏の本で、ユージン氏が瀕死の暴行を受けて証拠もあるのに、何故訴えない?と聞かれ、訴えると自分はそういう目的で写真を撮っていると思われてしまう、という話があり、この人は凄い人だな、と思いました。

以上、長々と書きましたが、
難しい題材にチャレンジしたこの映画は見ておいて良かったと思ってます。

ちなみに、J・デップは現在アメリカではパッシングされているので、この映画はまともに公開されていません。
J・デップが、破滅型ダメ男のユージン・スミスのどこに惹かれたのか、なんとなく分かりますが、それ以上にほとんど日本語で会話されるこの映画を作る困難に挑んで、完成させたのは素晴らしいと思いました。

現在も苦境の中にあるみたいですが、状況が変わり、立ち直ってくれることを信じてます。

詳細評価

物語
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音楽

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