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4.0点
小中学校の頃の社会科の教科書に、『造船大国』、『鉄は国家なり』といった日本の代名詞の横っちょに、あまり触れられたくないという感じで記されていた、『公害』の二文字。 人間や猫が、狂ったように痙攣を繰り返す。その鮮烈のモノクロをニュース映像で見た記憶。 当時住んでいた家の裏の川も、染色工場が垂れ流す液体で、日毎に変わる。これも『公害』のひとつかと、まだ柔らかかった頭で何度もつぶやいた。 そんな記憶が、50年以上も経って再現される『ミナマタ』によって、呼び起された。 水俣病を起こした『チッソ』の三文字は、呪文のように刻まれていたが、水俣病を撮ったユージン・スミスは、恥ずかしながら知らなかった。 彼を知ったことは大きな収穫だった。日本人ではなくニューヨーカーの彼が、命がけでシャッターを切ったことを知っただけでも。それも大ファンのジョニー・デップを起用して描いてくれたことに感謝。 僕が多感だった時代は、日本が環境問題にあまりにも無知だった時代なんだ。 当時の感慨はどこかに吹っ飛び、無知だった自分だけが剥き出しになった。
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