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復讐者たち
2021年7月23日公開

復讐者たち

PLAN A

1102021年7月23日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレその計画は彼らの蛮行を肯定したかも知れぬ

2021.8.16 字幕 京都シネマ 2020年のドイツ&イスラエル合作の映画(110分、G) 実在の人物アッバ・コヴナーが起こそうとした「Plan A」にまつわる事実を基にしたヒューマンドラマ 監督&脚本はドロン・バズ&ヨアブ・バズ 物語はホロコーストから生き延びたユダヤ人マックス(アウグスト・ディール)のモノローグにて、「自分の家族が殺されたらどうするかを自問してほしい」という問いかけに合わせて、水の中を落ちていく彼が映し出されて始まる 舞台は1945年のドイツ、マックスは自分を密告したドイツ人クレメンス(エッカード・プレウブ)の元を訪れ、「妻と子どもはどこに行った?」と凄んだ だがクレメンスは悪態をつき、「戦争が終わってもユダヤ人が安心して暮らせると思うな」と言い放った マックスは仕方なく難民キャンプを目指し、同じくホロコーストから生き延びたアブラハム(ミルトン・ウェルシュ)と名乗る男と行動をともにする 道中で英国ユダヤ人旅団と合流した彼らは無事に難民キャンプに到着した キャンプについたマックスは妻子の似顔絵を描き、尋ね人のボートを眺める そんな彼を気にかけた旅団の上官ミハエル(マイケル・アローニ)は、秘密裏に行われている「ドイツ人の拷問」を見せることにした 物語はキャンプに妻子の行方を知る女性(Petra Berndt)が訪れるところから動き出す 彼女は妻子が亡くなったことを告げ、マックスは激しい慟哭の中、ミハエルに同行したいと進言する アブラハムから「死神を封印した袋」を手渡されて別れを告げたマックスは、ミハエルとともに「ハガナー」の一員として、ニュルンベルグで行われるNAKAMの陰謀を阻止しようと内偵を進めることになったのである マックスは現地に赴いてNAKAMのメンバーと接触を図る 彼らは水道事業に潜り込んで、ドイツの水道網に毒を流す計画を立てていた NAKAMのトップであるアッバ・コヴナー(イーシャイ・ゴーラン)はパレスチナに毒を買い付けに行っていて、彼が帰国するまでの間に「水道網の調査」を終えようとしていたのである マックスは彼らの組織に紛れ込み、ドイツ人殺害の失敗時に助けられたアンナ(シルヴィア・フークス)、ツヴィ(ニコライ・キンスキー)らとともに水道事業の中枢へと入り込んだ アンナも息子をナチスに殺されていて、毎晩のように悪夢にうなされている NAKAMにとって、自分たちを売ったドイツ人は全員敵であり、民間人に対しても恨みを持っていたのである そして、とうとうアッバからの手紙が彼らの元に届き、その時が訪れようとしていた 物語は「PLAN A」の経緯を描きながら、それをどうして実行に移さなかったのかを描いていく 実際にどうだったかというのは史実を紐解く必要があるが、本作では「生きることが復讐」という結びを描いていて、「生きていることがドイツ人の良心の呵責として残る」という意味と、「後世を育むことでユダヤ人の系譜が受け継がれていく」という2つの意味が込められているように感じた この考え方が正しいかどうかはそれぞれの思想信条に依るところが大きいと思うが、ユダヤ的な思想かなあと納得できる部分はある これ以上ヘイトを重ねてもドイツ人のユダヤ人への感情はますます悪くなるし、ホロコースト自体を肯定しかねない 反ユダヤだったヒトラーを支持したのはドイツ国民なので、この分断というのは永遠に続くものなのかも知れません 映画としては緊張感のあるシーンもあるものの、アンナとの関係が唐突だったり、夢オチ的な演出があるところは賛否の対象になるかもしれない それでも、復讐というものの連鎖を断ち切れるのは被害者側しかいないという道理に直結して行くので、こういった悲劇の後始末というのは難しい問題なのかなとは思う マックスの問いに私も含めてほとんどの人が怒りをあらわにして復讐を考えると思うが、かと言って「無関係かもしれない人々」を「目には目を」で復讐対象にするのは間違っていると感じるのではないだろうか いずれにせよ、相手の感情というものはコントロールできないものなので、クレメンスのように「自己保身のために行動を正当化する」というのは避けられないだろう 自分の行動を正せる人間の方が稀だと思うので、この映画のような結末はファンタジーの世界のようにも思えた それでも映画の結末に「実際のKALAMの人々」が出演しているように、彼らの表情から「PLAN A」が失敗に終わったことが人生を豊かにしていることが伺い知れるので、罪と人は同義にすべきではないのかもしれません

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