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復讐者たち
2021年7月23日公開

復讐者たち

PLAN A

1102021年7月23日公開

つとみ

4.0

ネタバレ誰に対する復讐なのか。赦しを与える相手とは

第二次世界大戦後、生き残ったユダヤ人によるドイツ人への復讐を描いた作品だ。 家族を殺されたらどうする?というナレーションで物語は始まるが、ナチスに対してただ報復するような単純な話ではない。 私刑を実行していたミハエルはその理由を、遠い地で何もしなかったからだと言った。つまり、ナチスの残党に対して恨みがあるとかではなく、何もしなかった自分を赦すための行動。贖罪なのだ。 主人公マックスは収容所にて同胞であるユダヤ人をガス室送りにする手伝いをして生き延びた。 ミハエルのように「何もしなかった」どころか、ナチスの行いに加担していたわけだ。 アンナは息子が亡くなったことでナカムに参加しているのだが、息子が亡くなった直接の原因は自分が手を離したから。間接的にはナチスに追い詰められたからであるが、直接的に息子を死なせたのは自分だと思っているのだ。 つまり、最初のナレーションの「家族を殺されたら…」の殺した人物とはドイツ人ではなく、自分自身なのだ。 マックスとアンナもまた、ミハエルと同じように贖罪としてプランAを実行しようとしている。それは、自分が殺したという罪の意識と、自分は悪くないという想いの狭間で揺れる感情の赦し方を見つけられなかったから。 マックスは住んていた町を離れて最初にアブラハムという男と出会う。アブラハムは全てのユダヤ人の祖で預言者。死を招く死神を捕らえたから自分は死なないと陽気だ。 ミハエルと行動を共にするマックスに、約束の地にいくから死神の袋はいらないと渡してくれる。 物語の終盤で、マックスは死神の袋を開けた。意識が深遠に呑まれ、アッパが現れる。 ふたりきりになってしまっても町の水道に毒を入れる計画を実行する。そして死者しかいなくなった町。 貯水槽に落ちたマックスは意識を取り戻し、気付くと部屋の入口には大天使の名を持つミハエルの姿が。 アッパ(死神)によって引き起こされる悲劇は、アブラハムによる予言だった。これがマックスの贖罪になるのか?と問いかけているといえる。 もちろんそんなことでマックスの中に眠る罪悪感が払拭されるわけもない。 マックスは生き残ることが復讐だと言ったが、マックス自身も気付いていない罪悪感の払拭、つまり「贖罪」は、やはり生き残る、生き続けることだ。 死んだ者の分まで生きることが、自分を赦す方法でもある。 生き残ってしまったことに罪悪感を覚える、今、生きているユダヤ人たちに向けた「赦し」の物語だった。 生きていいんだ。あなたたちに罪はない。

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