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ビルド・ア・ガール
2021年10月22日公開

ビルド・ア・ガール

HOW TO BUILD A GIRL

R15+1052021年10月22日公開

Dr.Hawk

4.0

ネタバレ神々の声を覆ってしまった、偽りの成功

2021.10.28 字幕 京都シネマ 2019年のアメリカ&イギリス映画(105分、G) 原作はキャトリン・モランの小説『How to Build a Girl(2014年)』 16歳の高校生が自分らしさを探しに暴走する青春コメディ 監督はコーキー・ギャドロイツ 脚本はキャトリン・モラン 原題は『How to Build a Girl』、劇中での翻訳は「自分作りの方法」、意訳すると「イケてる女子になる方法」みたいな意味 物語の舞台は1993年のイギリス、ウェスト・ミッドランズ州のウルヴァーハンプトン(イングランド中央やや西より) そこでエンヴィル・ハイスクールに通うジョアンナ・モリガン(ビーニー・フェルドスタイン)は、16歳の勉学優秀のマセた女子だった 国語のべリング先生(ジョアンナ・スッキャラン)からは「行き過ぎ」を注意されるものの、自分のペースを崩そうとしないジョアンナ ある日、彼女が応募した詩が予選を突破し、番組「Today is the MIDLAND」の生中継で行われる本選に出場することになった 浮かれ気分だったジョアンナだが、本番で足がすくみ、「私の親友」と題した詩で父パット(パディ・コンシダイン)の闇ブリーダーを暴露してしまう それからことあるごとにブリーダーを揶揄されて、「スクービー・ドゥ(アニメのキャラの名前、弱虫!みたいな意味)」と呼ばれる始末だった ある日、兄クリッシー(ローリー・キナストン)から「音楽誌D&MEの記者募集の広告」を見せてもらったジョアンナは、ミュージカル「アニー」を題材にエッセイを送った 物語は「多くの偉人たちに囲まれる」意識高い系女子の暴走を描き、そこで「自分らしさの追求」と「生活」を天秤に掛ける様子が描かれていく 「ドリー・ワイルド」となって毒舌で酷評し、悪びれずに危ない橋を渡り続ける赤毛の少女は業界の噂になり音楽業界を引っ掻き回してい そうしてとうとう「アーセホール(劇中訳:クソッたれ)・オブ・ザ・イヤー」にて金賞を受賞して時の人となってしまうのである だが、頂点は突風のように変わり身を見せ、そこからは最下層へと一気に転落していく 想い人であるロックスターのジョン・カイト(アルファー・アレン)から距離を置かれたジョアンナは、二人の秘密を記事にして絶縁され、家族とは経済的立ち位置で不和が起こり、編集部とは方針で揉めて飛び出してしまう 全てを失ったジョアンナは心を入れ替え、酷評したアーティストに詫びの電話を入れ、ジョンにも本当の気持ちを打ち明ける そして、家族との和解を得て、新しい人生を歩む始めるのである 新しい試みとして自分自身を曝け出すエッセイ「Build a Girl」を書いたジョアンナは、「The Face(ロンドンのカルチャー誌)」のアマンダ・ワトソン(エマ・トンプソン」に見染められる もともと文才のあったジョアンナは、その才覚で再び世界を目指すのである 映画はわかりやすい仮初の成功と失敗を描き、それが「家庭、学校、仕事、恋愛」に一気に波及していく様は爽快である わずか数分のカットで地獄へ落ちる急落下は、それまでの自分自身の行動の集大成としての教訓であり、ドリー・ワイルドというシンボリックなアバターを脱ぎ捨てる時間でもあった 生活のためにキャラを演じてきた若者の姿は、どこか無理をしている若者すべての悩みと共鳴するものであり、そこからの鮮やかな復活が「自分の心の向きを変えるだけ」で果たせるというメッセージはシンプルで刺さるのではないだろうか こう言ったインテリ風の勘違い女子を演じさせたらこの人の右に出るものはいないという感じで、26歳の時点で瞬間的にでも16歳に見えるというのは恐ろしいことかもしれません いずれにせよ、1990年代という時代背景も相まって、少し懐かしさを感じるテイストになっていた ジョアンナの部屋の壁に彩られた偉人たちとの会話も楽しくて、そこにいる人たちのことに詳しければ彼らが放つ言葉のおかしさがわかるという仕掛けになっていた 初めは「自分にとって居心地の良いエールだったもの」が、彼女が外界に飛び出したことで「聞きたくない過去の自分」になってしまい、充実した今の象徴である自分の記事で隠していくところは奥ゆかしい 自分と世界を隔てる壁の在り方が変わった瞬間でもあり、痛みを伴った経験によって、同じ言葉の意味が変わっていく成長過程も素晴らしいと思う かなり早口なシーンが多いので、ソフト化されればのんびりと繰り返し味わいたい作品であると言える

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