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ディア・エヴァン・ハンセン (2021)

DEAR EVAN HANSEN

監督
スティーヴン・チョボスキー
  • みたいムービー 374
  • みたログ 779

3.62 / 評価:613件

「ミュージカル」として観ないこと、かな。

  • cnam1929 さん
  • 2021年11月27日 7時18分
  • 役立ち度 18
    • 総合評価
    • ★★★★★

冒頭からグワっしと心を掴まれた。びっくりするくらい、ハッキリと鷲掴みにされてしまった。主人公の孤独、痛いくらいの吐露。自身の言葉が、メロディにのり、歌になり、ヒリヒリするくらい繊細で、心のヒダを声色に置き換えたらこんなかなって、断面というか、声質の層というかが美しくて、ずっと、ずっとその声を聴いていたいと思った。それを“圧倒的な歌唱力“なんて言っちゃったらつまんなくて、だけど、多分ものすごいスキルを持った俳優さんなんだろうな。主人公の孤独を歌いきって、「これは、エヴァン・ハンセンの物語なんだよ」と、はっきりと明示している。
そして、その命題は物語の最後までブレてないところが素晴らしい。

お話の展開では、「嘘が嘘を呼び、、」という流れのプロットの中に、SNSという便利で、でも個人では制御のつかない厄介な情報ツールに、人々が振り回されるさまが入ってくるところが、現代的なリアルを持ち込んでいて、その先の展開をおいそれと読ませない上手さがあった。

エヴァンとお母さんのシーンには泣いた。今、悩んでいる人がいたら、特にあそこに伝えたいメッセージが集約されているんじゃないかな。人生の先輩であるお母さんに、「今、目の前にあって大きく見えて、動かしようのない現実は、でも、時が経てば必ず小さくなる。だからそれまで一緒にそれを見届けるよ、ずっとそばにいるからね」っていう内容が確信的で、「気付いてないだろうけど、これまでもこれからも、不完全なあなたを知ってるし、それをそのまま愛してるよ」っていう絶対的な母親のメッセージが、、、思い出したら泣けてきた。

父親が去る時のトラックの話、残された家が大きく感じたこと、自分が小さく思えたこと、お母さんの抱えてきた孤独の、息子への吐露も、母親としてだけでなく、女として妻だった自分として感じた喪失感まで含めて隠すことなく伝えていて、それが人間臭くて、リアリティがあって、綺麗に解決しようなんて思ってなくて、いいなと思った。

亡くなったコーナーに対しての救い、彼自身の本当の姿を誰も受け入れていないんじゃないか、っていう視点で書かれているレビューがあって、考えさせられたし、確かにそうなのかもしれないと思う。
ただやはり、これは冒頭にあったように「エヴァン・ハンセン」の物語だ。
自分の周りには「そうは見えないのに」精神を支える薬を日々必要とする人がいることに始まり、そういう人と話すことで自分は一人ではないと気づいたり、自分を受け入れて、できる限りのことを自分のやり方でやってゆこうとした、そこに、この物語の一番伝えたいことがあると思った。

「もしも友人がいなかったとしても、必ず誰かがいる、自分だけではないよ。頭を上げて誰かに声をかけて」というメッセージがあった。エンドロールにもしっかりそれが示されていたように。

最近はどんな映画でも、まずは全面的に寄り添って登場人物たちの目で、ものをみたり考えたり、追体験するような気持ちで観ている。誰かの人生の物語に誘われて、自分が非日常の世界に飛ぶことで、結果的に物語に癒されることになる。
共感できる、できない、の二択ではなくて、そういうお話なんだ、って見てみようとする事が肝要なんじゃないかって。

「ミュージカル映画」ってカッコ付きのカテゴリ分けで見に行くと上手くいかないかもしれない。「登場人物たちに伝えたい言葉があって、それが言葉では足りないから、メロディに乗せて歌いだし、歌うだけでは足りなくて、舞う」のがミュージカル、って言っていた人がいるけれど、まさしくそういうことを感じた物語、映画だった。
冒頭の歌をもう一度、良い音響、大音量で聴きたいから、もう1回映画館で観てもいいかなと思う映画です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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