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ファイター、北からの挑戦者
2021年11月12日公開

ファイター、北からの挑戦者

FIGHTER

1042021年11月12日公開

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4.0

ネタバレ復活と再生を目指す勇気と戦いの物語

韓国、ソウル。質素で小さなアパートに辿り着いた脱北者の女性、リ・ジナ。 彼女は知人の紹介で、休む間もなく食堂で働き始める。 中国に残した父を呼び寄せる為、より多くのお金を稼ごうと必死だ。 さらに、ボクシングジムの清掃の仕事を、掛け持ちする事にした。 そこは、館長とトレーナーのテスが、二人で切り盛りする小さなジムだ。 北朝鮮から逃れ、敗北者としての人生をスタートさせたジナ。 韓国にやって来てから、差別と偏見に満ちた中で孤独な日々を過ごしている。 北朝鮮にとっては国を捨てた裏切り者で、韓国にとっては厄介な難民のようなもの。 暮らしぶりは貧しく、家族はバラバラとなり、社会の不条理に晒される。 韓国で暮らす脱北者たちのリアルな現状を描く、社会派ドラマでもある。 やがて、ジナの悲惨な過去と怒りが、徐々に明らかになってくる。 母親は幼い頃に父とジナを捨て、一足先に韓国で新たな人生をスタート。 再会するも新たな家族を設けており、裕福そうな姿に苛立ちを隠せない。 ジナは、軍人だった過去もあり、次第にボクシングに興味を抱くように。 館長らは、ジナの静かに燃えるファイティング・スピリットを感じ取る。 ジナに可能性を見出し、ボクシングを勧めるのだが、当初は頑なに拒む。 だが、ある悔しさをバネに、ジナはボクシングの世界にのめり込んでいく。 負けたくない、諦めずに立ち向かっていく挑戦と勇気の想いを拳に込める。 てっきり、ボクシングでのし上がっていく、サクセス・ストーリーと思ってた。 ボクシングは、ジナが人生を取り戻し、再生を遂げる術の一つに過ぎない。 リアルなボクシングのファイトシーンはあるが、少なめで肝ではない。 ジナがいかにして、多くの困難に立ち向かう心情に変化するか、が見どころ。 その過程で、テスとの微笑ましく初々しい恋愛要素も盛り込まれる。 韓国に来てからは、ずっとやさぐれて尖りまくり、荒んだ日々だったジナ。 若者らしいテスとの交流に、初めてというか、ようやく笑顔を見せる。 周囲に心を閉ざしていたジナが、束の間癒される風景が素敵だった。 だがジナには、乗り越えなくてはならない多くの壁が立ちはだかる。 ボクシングは甘いものではなく、いざ実践となってもボコボコにやられる。 お金目当てもあり、本格的に取り組みプロを目指すことにするが。 実際は負け続けで、とんとん拍子にいかないのが辛く厳しい現実。 全て思い通りにうまくいかないのも、リアリティがあって切ない。 母との長年に渡るわだかまりにも苦しみ、抵抗を続けるジナだが。 ある事をきっかけに、互いを理解し歩み寄っていく姿が感動的。 ジナがずっと心に溜めていた想いを爆発させたときは、ウルウルきた。 途切れることのない親子の愛と絆も、しっかり盛り込んでいる。 ラスト、戦いに挑んでいくジナの姿に、救いと希望が見えて良かった。 彼女の戦いはまだ始まったばかり、ここからが真のスタートだと分かる。 一人の女性の勇気と戦いの物語であり、復活と再生を目指す姿を描く。 国家に翻弄されながらも、再び強くたくましい一歩を歩んでいこうとする。 逆境に立ち向かう彼女に、夢と勇気とパワーをもらえる作品だった。 南北に分断された、世界でも稀な複雑なお国事情もよく分かった。

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