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ファイター、北からの挑戦者
2021年11月12日公開

ファイター、北からの挑戦者

FIGHTER

1042021年11月12日公開

Dr.Hawk

2.0

ネタバレ脱北者としての葛藤<捨てた母への怒り

2022.1.4 字幕 京都シネマ 2020年の韓国映画(104分、G) 脱北した女性がボクサーに転身する中で、自分を捨てた母とのわだかまりに向き合うヒューマンドラマ 監督&脚本はユン・ジェホ 原題は『파이터』、英題は『Fighter』 物語は韓国のある海辺で波に打たれるジナ(イム・ソンミ)が描かれて始まる そして、場面は韓国のあるアパートを内観するジナの様子が描かれていく 不動産屋(イ・ムンビン)は「韓国でも珍しい物件です」と満面の笑みを浮かべながら部屋を紹介し、あの人(ビョリ=ジナの親戚、演:パク・ヨンボク)の紹介だから」と付け加えた ジナは住まいとそこに決め、ビョリの紹介する食堂で働き始める 食堂は多忙で週6の勤務、だが身寄りのないジナは稼ぐしかなかった ある日、不動産業者に待ち伏せされたジナは男を振り払った際に怪我をさせてしまう 男は治療費を寄越せと迫り、ジナは仕方なくもう一つ仕事を入れることになった 風俗関係にはつきたくなかったジナは、ビョリからボクシングジムの雑用を紹介される そこは女子ボクサーもいるジムで、ジナはひたすら掃除と後片付けに明け暮れていた ある日、女子選手のユンソ(キム・ヨンソ)をじっと見ていたジナを見たトレーナーのテス(ペク・ソビン)は、彼女に「ボクシングに興味があるのか?」と尋ねる だがジナはそんな金銭的余裕もなく、無愛想な言葉を投げ返すしかなかった だが、どうしても気になって、彼女らを見てしまうのである 物語は寝付けずに夜明け間近にジムに行ったジナが、そこでサンドバッグを叩くところから動き出す 飲んだくれて寝ていた館長(オ・グァンロク)は起き上がり、その音に才能を感じていた 特別に練習に参加させてマンツーマンで指導する館長 それに気分を害したユンソは別のジムに移籍してしまうのである 映画はボクサーの成り上がり物語のように思えるのだが、実質は自分を捨てた母(イ・スンヨン)とのわだかまりをぶつけるという内容で、驚くほどに雑念が多いボクサーになっている 試合どころか練習にも集中できないほどにメンタルはかき乱され、中途半端に声をかけてしまう母の行動がさらにジナを苛立たせる この映画の致命的なところは「ジナと母が母娘に見えないこと」である 顔の系統が全く違うので「韓国に来て整形した」などのエピソードがあるのかと思っても、母の娘(パク・セヨン)も同系統なので、ジナは父系の遺伝子が強かったのかなと思い込むしか他にない また、父と娘を置いて先に脱北した設定になっているものの、どういう経緯で韓国人夫(キム・ジェロク)と結婚しているのかなどの背景は全く不明である 父は中国に逃げて公安に逮捕され、娘は極貧生活をしているのに、同じ立場だった母だけが裕福に生きて、今更ながら娘が韓国に来たから母親ヅラするというのは理解に苦しむ この心情は母の娘の動揺に如実に現れていて、彼女はジナの存在すら知らないし、そもそも母が脱北者なのかすらも知らないように思えた とにかく家族の背景が全く見えないし、ビジュアルからもそれっぽさがまったくないので説得力が皆無に等しい その他にも「韓国人による脱北者への当たりの強さ」「脱北者が抱えるトラウマ」などは表面をなぞるだけだし、「母の生活からは韓国は裕福な国」みたいな対比になっていたり、ジナに性的な強要をする男が出てきたかと思えば物分かりの良すぎる天使のような男性に一目惚れされたりもする また、「脱北者」という特殊な設定を扱っているのに、その実態にふれるような社会的なメッセージもほとんどないので、ぶっちゃけ「金持ちの男のところに逃げた極貧の母」でも問題ない内容になっている とにかくあらゆる点で浅すぎて、しかも韓国を持ち上げるだけの内容になっていくので、微妙としか言いようがない いずれにせよ、本作に「脱北者の悲哀とか現実」を求めても無駄だし、「ボクサーとして成り上がる姿」を期待しても無駄だし、「淡い恋愛」を期待してもほとんど進展しないので微妙な感想しか得られない 設定を活かせていないどころか、その葛藤が伝わりにくい家族構成になっているので、母がもっとジナに対して冷たいとか、過酷ないじめ(スパーリングで過剰に殴られる)などがないと、ジナが何に苦しんでいるのかが伝わりづらいのではないだろうか 最終的には「脱北者何それ?」みたいなテンションのテスと良い感じになるものの、プロボクサーのデビュー前にイチャラブが必要なのかも微妙である 総じてスルー推奨の内容なので、とりあえず韓国映画は全て観るという盲目的な人以外にはオススメしようがありません

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