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ナイトメア・アリー
2022年3月25日公開

ナイトメア・アリー

NIGHTMARE ALLEY

1502022年3月25日公開

kap********

4.0

悪夢を産むのは人間

ギレルモ・デル・トロ監督作品ですが 「パンズ・ラビリンス」や「シェイプ・オブ・ウォーター」のような モンスターは出てきません。 前半の見世物小屋の怪しい映像やアイテム数々はデル・トロ色ですが ファンタジーでもSFでもなく、 見世物小屋でやっていることは全てインチキです。 主人公のスタンが習得する「読心術」もインチキのネタをバラしています。 日本でもメンタリストだのスピリチュアリストだのと称する インチキ手品師を今でもTVでよく見かけますが、 この物語の舞台である第2次世界大戦前の時代から 人間とは進歩しないものだと感じます。 中でもいかがわしさ、おぞましさの象徴のような「獣人」ですが 興行師のクレムが語る獣人の「正体」は本物のモンスターよりもおぞましい。 映画の後半は、一転してフィルムノアールの様相で、 全く別の映画を見るようです。 スタンを破滅に導く医師・リリスは 登場した時から絵にかいたようなファムファタールです。 スタンは見世物小屋で読心術のタネを手に入れ、それを使ってのし上がりますが 手を出してはいけないと忠告された、 死者を呼び出す「幽霊ショー」に手を出します。 インチキな「幽霊ショー」に疑問を抱くようになった恋人のモリーに 「死者の声を伝えることは残された者に希望を与える」と誤魔化そうとしますが それによって希望どころか予想外の悲劇が生まれます。 映画は最後にまた見世物小屋に戻り 皮肉で残酷なラストにはゾッとさせられます。 スタンの栄光と破滅、 戦争、酒、ドラッグ、そして野心や欲望が 人を容易に「獣人」(モンスター)に変えてしまいます。 それはスタンに限らず誰もが落ち込み迷い込む悪夢の小路。 悪夢を産むのも怪物になるのも人間であると言うこと。 だからデル・トロは、転落してモンスター化していくスタンを 愛情深く描いているように思います。

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