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ニトラム/NITRAM
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ニトラム/NITRAM

NITRAM

1122022年3月25日公開

moritama

4.0

孤立が生んだ悪夢

1996年、オーストラリアのタスマニア島で銃乱射事件を起こした男の事件までの一部始終を描く実話を題材とした映画。 ニトラムとは主人公のマーティンを逆から読んだ彼のあだ名。 監督は「アサシンクリード」「トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング」と話題作を監督し注目されるジャスティン・カーゼル。 主人公の犯人マーティン・ブライアントを演ずるケイレブ・ランドリー・ジョーンズはこの映画でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞している。 この映画はなぜ銃乱射事件が起きてしまったのかを考察する映画ではない。 淡々と事件を起こすまでのマーティンの日常が描かれる。 彼は知的障害があり、行動も突飛なことから周りから相手にされず孤立している。 両親との過去は描かれていないが彼との関係は疲弊し母親も精神的に疲れ、距離をとっている。 唯一父親は愛情を持って接し、将来彼と共にコテージを経営したいという夢を持っている。 彼は仕事も持たないが、サーフボード欲しさの小遣い稼ぎのための芝刈りに立ち寄った家の未亡人ヘレンと知り合い、共に惹かれていく。 ヘレンとの関係の一つの出来事から、周囲との孤立を深めていくことになる。 彼は純粋であるが故に行動が極端。 感情のコントロールもできなくなってしまうのだろう。 今の時代なら、障害者のケアはこの当時よりは手厚くなっていると思うが、 この映画を見る限り、何のケアもなく社会とも家族とも孤立を深めていく。 悲劇的なのは銃販売のルールが野放しになっていること。 事実でも、彼は銃のライセンスを持っていなかったのに簡単に銃が買えたという。 純粋で感情のコントロールができない若者の怒りが爆発した時に、悲劇が起こった。 この事件後、オーストラリアでは銃規制が厳しくなったが今もまだ、闇の銃販売は横行しているという。 孤立するマーチンを救えなかった社会の責任は重い。 死刑制度のないオーストラリアで今もマーチンは服役中だ。 2022.5.10 横浜シネマ・ジャック&ベティ

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