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アンネ・フランクと旅する日記
2022年3月11日公開

アンネ・フランクと旅する日記

WHERE IS ANNE FRANK

992022年3月11日公開

dtm********

3.0

「アンネの日記」の切り口は面白い

ユダヤ人のホロコーストを扱った作品は過去数多く制作されている。この作品もその一環なのだが、面白いのは「アンネの日記」の扱い方だ。  この日記はいうまでもなくホロコーストの犠牲となった少女、アンネ・フランクが書き残した日記である。世界記憶遺産にも登録されたこの日記は、アンネの日常が赤裸々につづられているといわれるが、その日記にアンネは「キティー」という名前を付けた。日記はアンネにとっては心の友とも呼べる存在であった。この映画はそのキティーが現代の世界で実体化して登場するというファンタジーである。それをアニメで表現したのは当然の演出選択であったと認めたい。  ただアニメで戦争の悲惨さを扱ったというと「ホタルの墓」を思い出す。ホロコーストはそれに匹敵する悲劇である。その悲劇の犠牲者は無実の人たちなのだが、最大の被害者は子どもである。  この観点から映画はテーマを掘り起こす。映画ではナチのホロコーストに現代の難民問題を重ねている。アフリカや中東アジアの紛争から逃れた難民の避難先としての欧州社会の実態が色濃く反映されている。  ただ映画ではそのテーマ性と、実体化したキティーがアンネ・フランクを探すというファンタジー性とがどうもかみ合っていない。現実世界に入り込んでくるファンタジー的な登場するキティーの扱いが統一性がない。アンネを探す探索者からいきなり世界平和を呼びかける予言者となる、その変わり方に説得力がないのだ。  テオ・アンゲロプロスの「永遠と一日」のアルバニアから亡命した少年や「霧の中の風景」の姉弟などを思い出す内容だ。意外に明るく軽い内容だが、そこにもどこかもどかしいものが残る。

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