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PLAN75
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PLAN75

1122022年6月17日公開

kap********

4.0

やがてPLAN65、最後はPLAN0に

自己責任と不寛容を推し進める世界。 この映画の早川千絵監督は「相模原事件」に大きな衝撃を受け 誰かが「要らない命」と「要る命」に選別しようとしているとに 危機感と憤りを感じたと話しています。 本作と深い関わりのある是枝裕和監督が クローズアップ現代で全く同じことを話していました。 真面目な人ほど全部を自分の責任として背負って疲弊して行ってしまいます。 過労死(自殺も含め)の記事をよむといたたまれなくなります。 一方で他人に「自己責任」を押し付ける人ほど 自分が上手く行かないのは他人が悪いからだ、 本来自分が享受すべき利益をかすめ取っていく他人が悪いのだ、 と考えてヘイトクライムに走ります。 その対象は老人であったり(老人の場合は若者)、外国人であったり、 女性であったり、ハンデキャップのある人であったり、 LGBTの人であったり、 要するに「自分が属するグループ」ではない人たちに牙をむきます。 「あんな人たち」と「こんな人たち」に分断して争わせて 得をするのは誰なのでしょうか。 「お互い様」と言う言葉がこの国で死語となったのは何時からでしょうか。 「この国の未来のために」と言う明るいPLAN75のCMがいかにも胡散臭い。 「老人数が減ってきてPLAN75の成果が現れてきています」と言う ニュースを読むアナウンサーの明るい声が不気味です。 役所の担当者の磯村優斗も、コールセンターの河合優実も 老人に対する対応は親切で丁寧です。 役所には恐らく月何人以上は契約させるノルマがあるはずです。 申し込んで来る人を待つだけでなく、 公園の炊き出しに来る人達を勧誘しています。 炊き出しもボランティアではなく勧誘が目的なのでしょう。 コールセンターの役割も 「心変わりをさせないために、きちんと最後まで誘導する」 ことだと責任者が訓話します。 口ぶりは優しく「決めるのはあなた自身ですよ」が常套句なのも インチキ商法あるあるです。 倍賞千恵子は仕事を解雇され年齢を理由に仕事も住居すら決まりません。 これも老人を自暴自棄に陥らせて、PLAN75を申請するように 仕向ける手口なのでしょう。 思うように仕事や住居が決まらないのは 一人暮らしの女性やシングルマザー外国籍の人たちも同様です。 死と言うものは別れです。 現実問題として良好な関係の家族のいる人は、この制度は選ばないでしょうし 家族が許すとも思えません。 しかしこの国では結婚願望のない人が25%、 生涯結婚しない、できない人が30%と言う調査結果があり、 益々身寄りのない老人が増えて行くと予想されます。 この映画で倍賞千恵子担当になるコールセンターの河合優実は 彼女と直接会ったことで彼女の人柄に惹かれ、別れを悲しみます。 また役所の担当者の磯村優斗は、 申請に来た疎遠にしていた伯父と顔を合わせることで やりきれない気持ちになります 2人とも老人を記号ではなく一人の人間と認識することによって、 今まで感じなかったこの制度への違和感を感じ始めます。 コールセンターの担当者が申請者と顔を合わせること、 窓口担当が近親者を担当するとこを、いずれも規約で禁止している と言うことは、そう言うことです。 一方で、映画では描かれていませんが いつまでも古い考えから抜けきれないのに権力の座に居座る 「老害」と呼ばれる人たちがいることも事実です。 子供の騒ぐ声を「騒音」と呼んだり、 ベビーカーで電車に乗ってくる母親を白い目で見たり、 育児休暇を取ったら出世に響くとか、 古い考えが少子化を推し進めているのも事実です。 結果、子供を増やすよりも老人を減らす方に力を入れるようになります。 「PLAN75が”好評”なためPLAN65への移行も検討されています」 というニュースが流れます。 一旦消費税と言う制度を作ってしまうと 3%から10%に上げるのが簡単なように PLAN75からPLAN65、いずれはPLAN25から最後はPLAN0まで 行ってしまうのでしょう。 この制度は「お国」の役に立たない人間を排除するのが目的であり、 ターゲットは老人だけにとどまらないのですから。

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