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破戒
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破戒

1192022年7月8日公開

まっとさん

4.0

ホッとして、ちょっと明るい気分になりました

なぜいま「破戒」なのか、映画を観る前は分かりませんでした。作品冒頭のクレジット「日本水平社創立100周年」ということで、なるほどと思いいたりました。  部落差別はもちろん、あらゆる差別はあってはなりません。なぜいま差別問題を取り上げるのかといえば、未だ世界各地で起きている差別、新しい事態としてはLGBTQへの差別、そして「Me too.運動」などのセクハラ、パワハラなどなど、これまでに明らかにされてこなかったあらゆる差別や偏見の社会問題が噴出してきているからなのでしょう。  拝見していると、丑松がいつどんな状況でカミングアウトするのか、そのクライマックスに向かって、物語が進行するように作られていることが分かりました。  それで拝見しながら考えたのは、「破戒」に代表される明治時代の部落差別(とはいえ、部落問題は現在でも続いている問題でもあります)と、そしてその出自をカミングアウトすることと、今の時代のLGBTQやMe too.で、カミングアウトすることとは違うんだろうか、どう違うんだろうか、そしてそれらの重大な決断は、それぞれ違うんだろうか、ということでした。  多分、ご本人にしてみれば同じように重大な事態でしょう。自分のいのちと同じよう重いことで、人生やアイデンティティに大きく関わる「事件」であることは間違いないはずです。  でも、時代の環境は大きく異なっていたはずです。多分、現代では想像できないほどの社会環境、そして社会全体の意識があったことでしょうから。モデルとなった人物はいたんだろうか、とも思いました。  ちなみにハンセン病でも同じことが起きていましたね。ハンセン病の場合、強制的に隔離となります。家族と縁を切り、一生社会とは断絶して生きなければなりませんでした。  やるせない思いです。  丑松がカミングアウトしたとき、そしてその後のエピローグは、なぜかホッとしたような、ちょっと前向きな明るい気分になりました。後味の良い思いで映画館を出ることは、見る前に想像したことと違い、自分自身意外でした。  素直に、ていねいに作られている作品でした。

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