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歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡

NOMAD: IN THE FOOTSTEPS OF BRUCE CHATWIN

852022年6月4日公開
歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡
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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(2件)


  • j9i********

    4.0

    ノマディズムの民

    歩いて見た世界 このシンプルな題名は好みだ。 岩波ホール、最後の上映作品の題名と作品に感慨深い思いを抱いた人は私だけではないと思う。 元々の上映予定どおりだったのか、予定されていた作品たちの中から、あえてこの作品を選んだのかは知らない。けれども、観終わったら、そんなことをつい思ってしまった作品だった。 1時間28分 享年49歳、にて没したブルース・チャトウィンを語るドキュメンタリー。 ただし、ブルース・チャトウィンの生い立ちや業績を追うような伝記ドキュメンタリーではなかった。 というより、この作品は、この作品の作り手であるヘルツゥオークによる亡き友、ブルースへの、まるでラブレターのようだと思った。 ブルースの初書籍「パタゴニア」の世界をヘルツゥオークが巡る。 アボリジニの歌に魅せられた(「ソングライン」)ブルースを追い、オーストラリアへ渡るヘルツゥオーク。 ブルースの本、ブルースの思い出を、ブルースの妻や書籍に関連した人々と交わす。または考察を語る。 美しい風景。もう今は消えた民の写真。 消えかかった文化。 アフリカから旅立った人類の永きに渡る放浪の足跡を辿って記録した、または創作をしたブルースの足跡をヘルツゥオークは懐かしげに語る。 また、ヘルツゥオークはブルースに作品を基にした自身の作品の思い出を語る。 〜〜 アボリジニのソングラインについての語りの章を観ているうちに、既視感を覚えた。 ふと気づいた。それは自分のお気に入りのファンタジー小説の内容だった。それは星々の歌が核力を持つ妙なる物語であるが、そうか、あれはアボリジニのソングラインにインスパイアされたのかも、とちょっと嬉しい気づきを得て、家に帰ったら読み返してみようとほくそ笑んだ。 〜〜〜 私が初めて岩波ホールで観た作品は「苺とチョコレート」だったような。次がだいぶ空いて「熊座の淡き星影」のリバイバルだったように思います。 岩波ホールは、いつも一期一会の観たい、と思わせる作品を上映していました。 派手な大作だけが唯一映画館で観る価値があるように言われる今の時代で、そうではない小品の多くもまた、映画館で観るべき価値、昨日観た111本の映画を巡る映画の講義のようなドキュメンタリーで、その作品の監督が言うように、映画館は、人々を夢に誘う。映画館は人に、ひとときの夢の旅を与える。それは、家の小さなテレビやPCやスマホの小さな画面で観るのとは全く異なる体験であると映画館に足を運ぶ者は知っている。 岩波ホールは消える。しかし岩波ホールが掲げた日本の人々と異文化を繋ぐ燈は、生き残ったミニシアターが引き継ぐ。そして引き継がれて燈を守り、燈が照らす星々を人々に伝え手渡していくのは観客です。 ブルース・チャトウィンが見上げた夜空。 太古の人類の手形から自分という生命に至るまでの人類の歴史を、様々な大地を渡り歩きブルースはなにを思ったのでしょうか。 そして、ブルースの心の世界を辿ったヴェルナー・ヘルツォークの心の風景は変わったのでしょうか。 岩波ホールが消えても、私もまた、映画の中に何かを見て、何かを探すために歩き回り、ヘルツォークのように何かを辿っていくでしょう。 岩波ホールらしい最後の作品だと思いました。

  • nn1********

    4.0

    一口寸評

    岩波ホールのラスト興行。 最終作品に本作を選んだ是非は、観客個々に委ねられた。 出来の良し悪しは別にして、自分は満足している。 他の映画館でこんな地味な作品は、到底上映できなかったと思うから。 岩波ホールは最期まで、ミニシアターの矜持、オリジナリティを貫き通したということだろう。 それはともかく、ブルース・チャトウィンは、紀行作家にして世界中を旅したノマド(名前は知っていたが、実はどんな人物か知らず)。 ドキュメンタリーに軸足を移していた巨匠と意気投合、HIVを発症し89年48歳で亡くなるまで友情を育んだ。 ブルースの伝記映画というよりも、監督自身がナレーションを担当し、出演もして彼の旅を回顧する一編。 (監督自身の撮影苦労話や、ブルースの作品が原作の映画、ブルースをモデルにした映画の紹介もあり、久しぶりにヘルツォークの過去作を見返したくなる効果はあった) ブルースは、パタゴニアやオーストラリアなどの辺境へ、未知のものへの好奇心だけで訪ね歩き、「世界は徒歩で旅する者にその姿を見せる」という名言を残した。 彼の老妻や識者のインタビューを通じて少しは理解できたものの、本作から本人の実像が強く立ち昇ってきたとは言い難い。 彼の4、5冊ある翻訳本を読め、そしてもっと歩けということか。 評価は、ホールへの長年の思いを込めて4.5★。 岩波ホールさん、いつかまたここで映画をかけてください。 生きていれば、また馳せ参じます。

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