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私のはなし 部落のはなし
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私のはなし 部落のはなし

2052022年5月21日公開

伊佐山部長

5.0

この映画のコンセプトは「はなすこと」である。

3時間半も座りっ放しでおしりが痛くなったが、そんな事は問題ではない。 今の率直な感想は「ざっくばらんなお話を聞かせてくれて、どうもありがとう」である。 まるで編集室に招かれて、監督と一緒にラッシュ・フィルムのチェックをしたようだった。それくらい、迫力がある。 「余り編集意図を加えず、素材そのものを、とっ散らかったまま、客に突き出す」と言うやり方もあるのだ。ドキュメンタリーに限らず、活字系でも、絵画系でも、演劇系でも、漫画・アニメ系でも。 もちろん、この映画を見ている方は脳ミソがキリキリ舞いさせられるが、そのキリキリ舞いこそが命なのだ、この映画の場合。 観客は監督から挑戦されているのだと言い替えても良い。 これだけは言える。 この映画に登場した人たちは、みんな正直で率直だ。複雑な胸の内を、ありのままに口にする勇気もある。 【オット訂正。煮ても焼いても食えないトンチキ野郎も、若干一名、登場します。「確信犯的な差別者って、こういうものなんだよ」と言う反面教師にはなるかもしれませんが、要は大馬鹿者です。】 話を戻すと、この映画に登場する人たちは、みんな「会話」をしている。引いたカメラに向かって、一人でしゃべっているシーンでも、まるで誰かと会話しているかのような雰囲気を感じさせる。自分の言いたい事だけ、一方的にしゃべくる人はいない。 実は、この点は満若勇咲監督の制作動機と深く関わっている。この映画のパンフレットに、満若監督自身が「ディレクターズ・ノート」と題して、明晰に説明しておられるので、この映画を見て感銘を受けた人には、是非とも、この一文にも目を通していただきたいのである。正確に要約する自信がないので、是非とも、原文に当たって欲しいのである。 もったいをつけて紹介すれば、この映画のコンセプトは「はなすこと」なのである。 「人権問題に本気で向き合いたい」と思っている全ての人に、この映画を見て欲しいと思う。特に、感受性が豊かで、社会意識を形成途上の中学生や高校生に。 複雑な問題は、説明の便宜のために無理に単純化しなくても良いと思う。「複雑な問題なんだ」と理解してもらうだけでも、意味のある啓蒙である。私は啓蒙の力を信じる。

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