2022年7月9日公開

幻の蛍

862022年7月9日公開
幻の蛍
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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(1件)


  • rxg********

    4.0

    全国の長姉のおねぇちゃん応援歌

    離婚の理由は語られないけれど、父親に引き取られた小学生の妹と離れて暮らす中2のお姉ちゃんのかなた。スナックを一人で切り盛りする母親を手伝う毎日で、どれかの部活に入らねばならぬのに、転校生ということもあって担任の先生からもそれを忘れられて帰宅部のままな上に、自分以外全員が携帯を持っているクラスチャットにも参加できず、日直の相棒はサボりでひとりでプール掃除をやらされる始末。夏休みもこれといってすることもなく、ただ家の手伝いとたまにある図書委員仕事でダラダラ過ぎゆくのみで、残りもいよいよあと一週間。父親にはどうやら若い新しい女性の影も見え隠れ。そんな夏の終わりに半年ぶりに祖母の家で再会した妹と、ちょっとした意図せぬ冒険に出かけたものの、お姉ちゃんから見ればわがままにしか思えぬ子供っぽい妹の態度にキレてしまい、ふだん、自分ばっかり損して我慢しているという不満が溢れ出す。妹は無邪気さと、自分は助けられ、可愛がられる立場であるという揺るがぬ根拠レスな自信から、姉の性格や気持ちの本質を突くことをグサッと言ってしまう小悪魔っぷりが、お姉ちゃんの毎日曇天のような鬱々イライラな気分に拍車をかけるプチ冒険のクライマックス、お姉ちゃんと妹が相互に仕掛けた思いやりが合体して、ちっぽけだけど明るくて優しい希望の光が観る者の胸の奥に点灯する。お父さんの近くに最近現れた女の人は本当はお父さんの従姉妹だとわかって急に緊張の糸が解けたように安堵したお姉ちゃんは、本当はまだお父さんの胸で甘えたかった自分、お父さんの作るハンバーグが大好きだった自分が爆発するように湧き出して、もとに戻るわけではないんだろうけど、離れた家族がそれでも切れない愛情でこれからも繋がって大切に思い合う気持ちが、日本人の夏休みの原風景のような映像と環境音、音楽に違和感なく乗って共鳴し、とても心地良い余韻を残すのでした。  トトロを意識したという劇中音楽、たしかにジブリっぽいと思いながら鑑賞していたんですが、単独の楽曲として成立するジブリのそれらとは違い、あくまで本作のあの映像、あのシーンに溶け込んで一体化し、不可分な複合体に昇華していると感じました。映像を邪魔しないながらもなくてはならぬ、とでもいったような、とても聴き心地のよい映画音楽だったと思います。  主人公は始終仏頂面で面白くなさそうな棒読みですが、それにはわけがあるのです。そしてまあなんと典型的な妹気質、全国のお姉ちゃん達はそうそうあるあると膝を打つことでしょう。二人の娘の父親である自分は、にやにやしながら姉妹あるあるを楽しんだのでした。  夏休みに相応しい佳品だと思います、ハイ。

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