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女狙撃兵マリュートカ

女狙撃兵マリュートカ

SOROK PERVYI/THE FORTY FIRST

91

bakeneko

5.0

ネタバレアグファカラーの映像美!

「誓いの休暇」で戦争に翻弄される人々をヒューマニズム的視点で捉えて絶賛を博した、グリゴーリ・チュフライのデビュー作で、本作も新鮮な映像の中に人間性と戦争の真実を見せてくれる“人間ドラマ&戦争寓話”の傑作であります。 ソ連映画祭等では必ず上映ラインアップに入っている本作は、明朗なテーマ&引き締まったドラマ構成&映像の非凡さ&主演男女優の美しさー等の娯楽性&ドラマ性&芸術性満載の名作であります。 革命内戦中のカスピ海沿岸を舞台にした、“小さな戦争寓話”なのですが、物語前半の砂漠の光景と後半の黒海の自然描写にまず驚かされます。そして、カザフスタン人の風俗やロシア各地から戦線に駆り出された兵士の境遇の差も興味深く、特に主人公男女の“境遇&イデオロギーの差異”は、革命内戦を上手く具象化してみせてくれます(当時のソ連映画としては驚くべきことに、作者は“どちらが正しい”とも言っていません。そしてこの公平な視点によって本作は永遠性を得たと言えます)。冒頭から単刀直入で“贅肉の無い”語り口は、終始簡素でながらも緊迫感を維持していますし、登場人物の心理把握&描写も精緻なものがあります。 そして、物語に加えてもう一つの見所であるアグファカラーによって写し取られた映像は、目を見張らせる色彩と構図の目白押しなのであります。 (ちょっと解説) ソ連最初の天然色映画「石の花」でも使用されてその色彩美が注目された、“アグファ”社のフィルムが本作には使われています。ベルリンに本社があった為にソ連はカラー初期からこの会社のフィルムを使った作品があるのですが、 その特色を簡単に言えば、 色彩の発色が他に比べて鮮やかで、更に独自のくっきりとした明暗を出すことにあります。 日本でも、小津安二郎監督のカラー作品に使われていました(「浮草」や「彼岸花」、「秋日和」の海の碧さや紅葉の紅を思い出されると良いと思います)。そして、残念ながら2005年にアグファ社が倒産した為に、この特殊な映像美は限られた作品にのみ留められているのであります。 炎や海、日光等の鮮烈な色彩はもちろん、曇天の砂漠や内海の暗さ等も特異な色で捉えた映像は、躍動する人間と意欲的な構図と相まって、必見の美しさと芸術性を見せてくれます。 そして、主人公達がなかなかの美形であるのみならず、脇役のキャラクターや演技も的確なことも付け加えておきます(イゾリダ・イズヴィツカヤとオレグ・ストリジェーノフを観ることが出来るのは本作のみ!)。 全世代的にお薦めの芸術派&娯楽派&ミーハー映画ファン納得の傑作であります。 ねたばれ? 1、マリアの愛称型がマリュートカ!なので、日本語題名は“狙撃兵まりあちゃん”みたいな感じですーやはり原題の“四十一番目”のほうがシンプル且つかっこいい!

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