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楽聖ショパン (1944)

A SONG TO REMEMBER

監督
チャールズ・ヴィダー
  • みたいムービー 3
  • みたログ 18

3.00 / 評価:8件

原作は同じでも・・・

  • rup***** さん
  • 2017年11月20日 0時04分
  • 閲覧数 851
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

本作は、双葉十三郎さんが『ぼくの採点表』の中で「別れの曲」の改悪と酷評していたことで記憶に残っている作品です。
「別れの曲」と同じエルンスト・マリシュカの原作を使い、「別れの曲」と全く同じシチュエーションの場面が多々あるにもかかわらず、登場人物の性格描写等を大きく変えてしまっているために、「別れの曲」を愛好する方々には受け入れがたいものとなってしまっているようです。

「別れの曲」ではショパンの恋人であったコンスタンティアは、抵抗運動の同志という間柄になっていますし、コンスタンティアのために書いた『別れの曲』は、ジョルジュ・サンドに対する愛の曲へとすり替わってしまっている。

さらに、「別れの曲」では、サンドがショパンの運命の人として描かれ、最大の理解者でもあるがゆえ、2人が結ばれることに違和感を覚えることなく終わる結末でしたが、本作では、後半部分でショパンとサンドが結ばれた後の物語を描いているため、2人の関係性も変わってしまっています。

双葉さんは、エルスナー教授がのさばりかえってショパンとサンドの恋路の邪魔をしているというようなことを書かれていましたが、そもそもサンドの描き方が「別れの曲」と異なっています。
「別れの曲」では聡明で包容力のある女性というイメージだったのが、マール・オベロンが演じる本作のサンドは、自分の意思を押し付けるような高圧的で冷たい女性という印象であり、ショパンを世間と隔絶させることによって、ショパンの祖国に対する思いを忘れさせてしまおうとするような人物として描かれている。

一方、エルスナー教授を演じているポール・ムニは、オーバーアクトぎみではあるものの、この大仰な立ち居振る舞いはオリジナルの人物描写に近いものがあるので、ムニの演技が取り立てて大袈裟という風には感じませんでした。

後半において、サンドの影響でエルスナー教授と一切顔を合わせようともしなくなってしまうショパンの心の変化が分かりにくいのですが、祖国で捕らえられた同志の保釈金を工面してもらおうとコンスタンティア(若き日のニナ・フォック)が現れ、教授もショパンに才能がある者は他の人々のために貢献すべきだというようなことを説いて、祖国への思いを甦らせたショパンは、体調が思わしくないのにもかかわらず、ヨーロッパを廻るコンサートツアーを決行し、身を削って演奏を続けることになります。
本作のエルスナー教授は、ショパンが政治や革命には関わらず、純粋に作曲の才能によって祖国に尽くしてほしいと願っていた「別れの曲」の教授の立ち位置とは全く異なっているように感じました。

そして、この終盤の演奏旅行のくだりを観ると、同じくシドニー・バックマンが脚本を書いた「スミス都へ行く」のフィリバスター(議事妨害)のシーンが思い出されます。
ジェームズ・スチュアートの演じる青年スミスが疲れ果てて倒れてしまうまで演説を続ける姿とショパンが血を吐いて死の床に着くまで演奏を続ける姿というのが重なって見えてくるのです。
戦時中の作品なので、国のために身を捧げる愛国者としてショパンを描くことが時勢に叶っていることなのでしょう。
本作は、製作も兼ねているシドニー・バックマンの手によるショパンの物語という色合いが強く出ていたように思います。

監督は、”キングじゃないほうのヴィダー”と言われたりしてしまうのが気の毒なチャールズ・ヴィダーですが、ハリウッド製ながらヨーロッパを舞台にした作品で格調ある雰囲気を出すのがうまい人でもあり、私個人としては、この監督の作品を割と気に入っています。

本作では、ショパンが宮廷に招かれてピアノを弾くシーンが印象的で、ピアノを弾き始めると引きの画面になって、演奏が食事会のBGMの役割でしかないという当時の音楽家の地位の低さが分かるようになっているほか、支配者であるロシア人のポーランド総督がその場に現れたことに憤慨したショパンが怒りを露わにして立ち去ってしまう場面では、総督の座っている椅子の背中のみを映し出してその場の空気を伝えるというようなところで、演出の上手さを見せていました。


ヴィダー監督の遺作である「わが恋は終りぬ」は、リストを主人公とした物語で、ショパンとリストという2人の音楽家を、主客を代えて描くことでヴィダー監督の集大成となったようにも思えます。
製作途中で亡くなったヴィダーの後を受けて「わが恋は終りぬ」を完成させたジョージ・キューカー監督も、これはヴィダーの作品であるとして、あくまでも協力者という立場を取り、クレジットには監督としてヴィダーと名を連ねてはいません。
本作をイメージさせるような衣装を着たショパンとサンドが登場していたのも印象に残りました。

詳細評価

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