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かくも長き不在

かくも長き不在

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE/SUCH A LONG ABSENCE

98

per********

4.0

ネタバレ99%の確信と1%の疑念

鏡を上手く使い、長回しと瞬間で切り替えるメリハリのきいたカメラワーク。記憶喪失の男の目の表情だけで見せる演技。そしてその夫らしき男と妻の思い出がつながりそうでつながらない絶妙なやりとり。まさにカメラ、演技、脚本が一体となった映画の王道のような作品ですね。 この映画を名作たらしめているのは、記憶喪失の男が最後までテレーズの夫かどうかを確信させない演出だと思います。観客は、男が名前を呼ばれてホールドアップするシーンで99%夫であることを確信しますが、100%ではない。叔母たちが否定したという伏線がここで効いてきます。 もし夫だと証明するシーンを入れてしまったらどうでしょうか。テレーズは戦争によって夫と夫婦生活を奪われた哀れな女性、というありふれたテーマの映画になってしまいます。 ところが監督はそうはしなかった。1%の疑念を残すことによって、テレーズは失意のあまり浮浪者を夫だと思い込もうとしている妄想女、というもう一つの哀れみが加味されます。 そのことによって最後のテレーズの台詞「冬を待つの。冬を待ちましょう」は、単に夫を待ち焦がれる希望の言葉ではなくて、どこか哀しく物悲しい響きをもって私たちに深い余韻を残すのです。

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