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かくも長き不在

かくも長き不在

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE/SUCH A LONG ABSENCE

98

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4.0

ネタバレデュラス脚本への疑念

かくも長き不在。マルグリット・デュラス脚本なのだが、私はデュラス脚本としては『二十四時間の情事』が好きだ。しかし、『雨のしのび逢い』は好きではない。デュラスの脚本が評価を下げてしまっている。 この『かくも長き不在』は、記憶を失った夫(?)が戻ってくるという内容なのだが、記憶は結局戻らずに、アリダ・ヴァリの片思いで終わる。アリダ・ヴァリは熱演。 デュラスはヴァリの心情をこの作品のテーマにしている。そこが私がこの脚本を好きになれないポイントだ。 まず言っておきたいのだが、デュラスは『雨のしのび逢い』でもそうだったが、主人公である中年女性の心情をメインに据える。そういう恋愛劇だ。そしてそこはリアルではある。しかし相手役の男性が常に鏡のような存在になっている。実在がないのだ。とても簡素な存在として描かれている。 デュラスはリアルな中年女性の心情を描こうとするが、私はそれでは片手落ちなのではないかと思う。つまり中途半端だ。本来、現実というものは、一方通行な心情ではなくて、相互的な気持ちのかわし合いである。男性にも歴とした心情が存在し、実在する。 だからそこに重度の悲劇性が存在する。デュラスの脚本はそこまで行き着かない。中途半端になって終わってしまう。 あとは監督の技量なのではないかと思われる。アラン・レネ監督が素晴らしいのは言うまでもない。そしてこのコルピ監督は、決してできの悪い監督ではないものの、平凡なショットに固執したり、表現の工夫がなかったりと、実力では目を見張るものがない。バランス感覚も中途半端であり、それがデュラス脚本と相まって、平凡な印象を助長させている。 良いところも実はかなりある。カメラは確実に優れたレベルの人だ。そして音楽も悪くない(多少湿っぽいが...)。アリダ・ヴァリは素晴らしい演技をしている。あと一歩足りなかったといったところだ。

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