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かくも長き不在

かくも長き不在

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE/SUCH A LONG ABSENCE

98

tit********

5.0

ポエジーな反戦映画

このように素朴で穏やかな流れの作品は、今の時代にはなかなか見当たらない。 河辺に棲む浮浪男性、記憶を失くしたこの男に何があったのか。 テレーズは店に招き入れる。鏡越しに発見した後頭部の傷が苛酷な過去を物語る。 記憶戻らぬまま帰っていく男性の背後から、テレーズはたまらず名前を呼び掛ける。周囲の者も連呼する。 そして男の想定外の反応。 耳に響く声は投降を宣告する声、迫り来るトラックのヘッドライトは敵兵を照らす投光器。 この息を飲む展開で、この作品が反戦映画であることが一挙に明らかとなる。 彼は旅に出たとテレーズにうそぶく隣人の優しさ。テレーズが正気を保つにはそれを信じるしかない。季節が移ればまた戻って来るでしょうという儚い言葉が、観るものの胸深く沈んでいく。

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