レビュー一覧に戻る
かくも長き不在

かくも長き不在

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE/SUCH A LONG ABSENCE

98

stanleyk2001

5.0

アルヴェール・ラングロワ!

「かくも長き不在」1961 テレーズ・ラングロワ(アリダ・ヴァリ)はカフェを営んでいる。16年前にゲシュタポに連行された夫アルヴェールを待ち続けている。 1940年5月にフランスはナチス・ドイツに敗れペタン元帥の率いる傀儡政権ヴィシー政府が置かれた。ナチスに抵抗する人々はレジスタンス組織を作り地下で戦い続けた。 おそらくアルヴェールもレジスタンスの一員でありゲシュタポに逮捕されたのだろう。 ある日アルヴェールにどこか似ている浮浪者が街に現れ廃屋で暮らし始める。テレーズは夫アルヴェールに間違いないというがアルヴェールの母親は違うような気がするという。知人達もアルヴェールかどうか自信が持てない。 16年と言えば20歳が36歳。しかもゲシュタポの拷問にあったとすれば面変わりもしているかもしれない。カルロス・ゴーン氏も逮捕前はエネルギッシュな風貌だったが108日の拘置所暮らしから保釈された後は頰がこけ10年も歳をとったように見えた。 テレーズは浮浪者を食事に誘いレコードをかけて踊る。しかし彼の記憶は戻らない。 ラストシーンで彼のとった動作が私達に伝えるものがとても重い。 カンヌ映画祭パルムドール、キネマ旬報ベストワンを取った傑作だけれど監督アンリ・コルビの晩年は寂しいものだったそうだ。 「今村昌平が、映画の中の男のように両手を上げて見せたとき、アンリ・コルピ監督の目から大粒の涙がこぼれた。もともと映画の編集マンであったコルビは、デビュー作にして傑作『かくも長き不在』で世界に名を馳せた。だがその後は鳴かず飛ばずで、編集の仕事で細々と生活してきた。生涯ただ一作の監督であった。 ・通訳を介したフランス語の会話はもどかしかった。しかし今村昌平の仕草は、言葉よりはるかに雄弁であった。この瞬間、アンリ・コルビのさびしい晩年は報われたたのである。9年後、彼は84歳で死んだ。(公明新聞:ことばの玉手箱) 作家:関川夏央」

閲覧数1,131