5.0点
女一人に男が二人。 筋だけ追えばメロドラマ。 だが、それを格調高くしている、登場人物の生き様。 時代背景も絡んで、どう生きてきたか、どう生きていくかが、各登場人物に問われる。 自分だけのために生きるか、誰かのために生きるか。 ファムファタール。否、破滅させているわけではないから、単なる”運命の女”か。 二人の男を手玉にとる悪女のようにも見えるが…。 困難な道を歩む愛する男を支えて生きるか。 恋しい男と、穏やかで楽しい生活を送るか。 揺れる女の覚悟。でも…。でも、でも…。 永遠だと思っていた愛が、つかぬ間のものだと知った男。 傷ついた心。世界情勢。揺れる男の決断。つかぬ間が永遠になる方法。 愛する女の間夫を知った男。 でも、取り乱さない。自分にはやらなければいけないことがあるから。ただ、愛する女の無事と幸せを願うのみ。 プロパガンダ映画として制作されたのではないが、プロパガンダ色が濃厚な映画。 映画に出てくるドイツはナチス親衛隊ではないが、ナチスがやったことを知っているから、つい、ラズロが英雄に見え、応援したくなってしまう。 ハンフリー・ボガート氏。ハードボイルドの代名詞。 だから、最初はリックが傷ついた心を持て余し、グジグジしているので驚いた。 でも、気持ちは共感できる。恋敵と自分を裏切った女の生死を決める切り札をどう使うのか。 映画は、物語でも堪能させてくれるが、魅惑的な台詞のオンパレード。 意訳の代名詞。バーグマンさんの瞳にくぎ付けになってしまい、この台詞が説得力を持つ。 ボギーの言い方。歯が浮きそうな台詞を淡々と口にするのだが、リックが言うと様になる。 付きまとってくる女を突き放すとき。 怒りを込めて挑むように「君の瞳に乾杯」。想いを込めての「君の瞳に乾杯」。 他にも、他にも…。 そして、ラズロの、ちょっと独善な、高潔さ。 彼が下世話に描かれていたら、映画としての余韻がなくなってしまう。 サムの愛くるしさや警察署長の風見鶏が、緊迫した物語の中での息抜き。 それでいて、美味しいところを抑えている。 何故だかわからずに終わった愛は、引きずる。 けれど、 覚悟を決めて終わらせた愛は、永遠の宝物になる。 自分の欲だけではない。 でも、自己犠牲だけでもない。 愛の形。 自分ならどうするか。いつまでも、語りたくなってしまう。