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語らざる男

語らざる男

OPERATION SECRET

108

rup********

4.0

ネタバレ対独レジスタンス物と思いきや・・・

第二次大戦後のパリで、大戦末期にアルマンという対独抵抗組織の活動員が殺害された事件について査問会が開かれ、容疑者として名指しされている同じ抵抗組織の一員であったピーター・フォレスター(コーネル・ワイルド)の戦時中の行動を、彼を知る人物が回想形式で語っていくという流れの作品。 仏外人部隊に参加していた米国人ピーターは、交戦中に上官アルマン(ポール・ピサーニ)の指示に従って独軍に投降し、オーストリアの収容所に送られます。仲間のラトレック(カール・マルデン)とともに脱走を試みるものの失敗して負傷し、再び収容所へ。フランスへ送還後、イギリスへと渡り、米国海兵隊から独軍の軍事工場を空爆した後の爆撃の成否を確認する特別任務を命じられ、仲間2人とパラシュート降下でドイツに潜入する・・・といったあたりまでの前半のくだりが若干もたつき気味。 途中仲間を失うもかろうじて任務を終えた後、レジスタンスの助けを借りてドイツから脱出しようとする逃亡劇になってからは、テンポが出てきます。 尼僧姿に変装したレジスタンスの一員マリアがサポート役となって、ピーターには司祭の服を用意し、司祭と尼僧の姿で逃走するのがちょっとユニークで面白い。 マリアの役は、フィリス・サクスターが演じています。数年前にフィリスが亡くなった時に『スーパーマンの育ての母マーサ役で知られる』というような書かれ方をしていましたが、歳を取ってから出た小さな役が代表作のようになってしまっているのは何とも惜しいですね。 彼女はMGMから当時期待の若手スターとして売り出された人なので、演技もしっかりしていますし、細面でさわやかな笑顔がとても素敵です。 本作では、ワイルドと連れ立って逃げる際になかなか活発なところを見せてくれていて、男たちが中心の硬派な作品に華を添えています。 独仏の係争地であったアルザス出身の女性という設定で、「私は戦争次第でフランス人にもドイツ人にもなる」というセリフが印象に残ります。 ピーターは、戦時中同じ仏外人部隊で軍曹をしていたマルセル(スティーヴ・コクラン)がリーダーとなっているレジスタンスの一員に加わり、独軍が開発していた当時最新鋭のジェット機を撮影したフィルムを入手する任務に就くことになりますが、このフィルムを手に入れたところから本作の製作意図がはっきりしてきます。 本作は1952年の作品で、朝鮮戦争が行われているまさに冷戦真っ只中。もう反ナチ映画を作っているような時代ではなく、レジスタンスの中に本当の敵(=共産主義者)が現れる。 かくて、ストーリーは、レジスタンスにおける内ゲバへと転換していき、そこで、アルマン殺害が行われます。 そして、パリの査問会で関係者の陳述が一通り終わったところに死んだと思われていた鍵を握る重要人物が現れ、真犯人に審判が下るというオチ。 冒頭、査問会に顎ひげをたくわえた鹿爪らしい顔つきのある出演者がいる時点で何か怪しいと思ってしまい、話が進むうちに、ああ、やっぱりね、ということになるので、回想形式でつくるなら、もっと意外性を狙った脚本になっていれば、終盤はさらに面白く観られたのではないでしょうか。 主演のワイルドはあまり特徴のない無難な演技ですが、ちょくちょく顔を出すカール・マルデンがいつもながらのアクの強さを出しています。 フランス人もドイツ人も英語でセリフをしゃべっているので、リアルな雰囲気に欠けるという難点はあるものの、撮影監督がテッド・マッコードなので、シャープな瑞々しい白黒映像を堪能できます。特に海岸のシーンは印象的。 最近、新作で赤狩りをテーマにした作品を観ていたので、反共産主義を謳った本作は、その時代の空気を感じ取れる恰好の題材として興味深く観ることができました。

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