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ガラスの墓標 (1969)

CANNABIS/FRENCH INTRIGUE/THE MAFIA WANTS YOUR BLOOD

監督
ピエール・コラルニック
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3.75 / 評価:12件

J・バーキンと殺し屋コンビの奇妙な関係

今回取り上げる『ガラスの墓標』は1970年のフランス映画。内容はマフィアに雇われた殺し屋コンビが、仲間を殺した敵の犯罪組織に戦いを挑む犯罪映画(フィルム・ノワール)である。アクション映画として観どころが多いが、なんと言ってもヒロインを演じるジェーン・バーキンが本作の顔である。彼女が23歳の頃に撮影したと思われる。
華やかなパリの街角だけでなく、頽廃した麻薬のパーティ、スラム街の汚れた景色、寂しい田舎の風景まで、フランスのさまざまな風景が映されるが、あらゆる風景に溶け込んでしまうジェーンの白磁のような透明感は、いま観ても魅力的だ。僕はファッションの事はまるで分からないが、普段着の自然体な着こなしが格好いいのだ。

日本での公開は1971年5月29日で、東京では007シリーズなどのアクション大作を得意とする「日比谷映画」で上映された。ちなみにジェーンの娘で女優になったシャーロット・ゲンズブールは、日本公開の2か月後に誕生したことになる。
共演はシャーロットの父でもあるセルジュ・ゲンズブールで、音楽も担当している。主題曲はプロコム・ハルムの「青い影」に感じが似ていて、さらに言うとバッハの「G線上のアリア」などのバロック音楽に通じるものがある。セルジュとジェーンのラブシーンは、二人の私生活を覗き見ているようでドキドキさせる。

主人公は殺し屋を演じるセルジュ。ジャン・レノを思いっきり痩せさせて荒んだ感じにしたような容貌である。ユダヤ系らしく鷲のような鼻が特徴的だ(劇中でもロシア系のユダヤ人と語られる)。彼がスラムのような荒んだ地区を歩くとき、老人たちが鋭い視線を向けてくる。ユダヤ人に対する偏見が残っている事をさりげなく感じさせるシーンである。
彼のキャラクターが詳しく描写されている。銃撃で受けた傷によって睡眠をつかさどる神経が損傷し、眠れるのは重傷を負った時だけ。傷が癒えれば不眠症に逆戻りだ。こんな稼業に嫌気が差していた彼が、相棒と組んで敵対する組織を追い詰めていくが、知り合った大使の娘(バーキン)と愛し合ううちに、殺し屋を廃業する決意を固めていく。

もう一人の重要キャラが、ポール・ニコラス演じるセルジュの相棒だ。無鉄砲な若者で、危険な状況に身を置くことに喜びを感じるタイプ。ハンサムな顔立ちをしているが、ときおり見せる乱暴な仕草が怖い。僕は「傷だらけの天使」や「太陽にほえろ」の頃の萩原健一を連想した。そんな彼もセルジュとは気が合い、どことなく同性愛の関係のようである。本作のロマンス担当がセルジュ、アクション担当がポールという風に役割分担されているようだ。
この3人は三角関係ということになるが、ジェーンがポールに対し警戒する様子を見せるものの、セルジュをめぐって深刻な対立に発展するわけではない(二人が口喧嘩するシーンすらない)。セルジュが大切にしている者は、お互いに手出ししないという暗黙の了解があるのか。

出演者のことをさらに書くと、敵組織のボスを演じるのがクルト・ユルゲンス。「007/私を愛したスパイ」で悪役のストロンバーグを演じていた。彼もまたセルジュと同様、犯罪組織のボスであることに嫌気が差している。抗争事件を捜査する警部を演じるのがガブリエレ・フェルゼッティ。この人は「女王陛下の007」でボンドの義理の父となるユニオン・コルスの首領ドラコを演じたが、残念ながら昨年の12月に90歳で亡くなっている。

原題は大麻を意味する“CANNABIS(カンナビス)”という。映画の冒頭に「CANNABISはドラッグについての映画ではない。愛とアクションの映画である」との但し書きが出る。僕はこの時代のことをほとんど知らないが、ドラッグがポップカルチャーに大きな影響を与えていた1970年当時でも、このタイトルは刺激的だったようだ。ただしここが大事なのだが、主役3人が敵組織の調査のために麻薬パーティに潜入する場面はあるが、実際に大麻を使用するシーンは全くない。

僕がジェーン・バーキンの名前を知ったのは1978年の「ナイル殺人事件」だった。劇中で悲劇的な最期をとげる役だが、本作の彼女は好評だったようだ。同じアガサ・クリスティ原作の「地中海殺人事件」(1982年)では犯人役に“出世”している。
彼女が実はイギリス生まれだというのは最近知った。記憶に新しいのが2011年の東日本大震災。放射能を恐れて多くの外国人が日本を離れる中、周囲の反対を押し切って来日して渋谷でチャリティーライブを開き、気骨のあるところを見せた。
『ガラスの墓標』の中で、セルジュを治療する医者から「あなたは虚弱体質だね?若いうちはいいが、歳をとると一気に老け込んでくるぞ」と言われるが、現実のジェーンは古希が近くなった現在も元気である。

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