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カラヴァッジオ

カラヴァッジオ

CARAVAGGIO

93

じゃむとまるこ

4.0

強烈な作家性を拒否するか魅了されるか。

大いに好みのわかれる映画で、好きな人は熱烈に嵌るだろうけれど、ほとんどの堅気の方は受け付けないという腐女子好みの映画でしょうか・・・・という偏見はナシで、D・ジャーマンの美学との相性が悪ければさっぱり面白くない映画かもしれません。 実在の画家カラヴァッジオ(1571~1610)イタリアルネッサンス終末期からバロック絵画への移行の時代を生きた天才画家の破天荒な38年の生涯を描いているのですが、大枠は伝記の中に収まっていますが、デレク・ジャーマン監督の美へ嗅覚に共感できるものだけが楽しめるという監督独自の感性が冴える、映画そのものがどの場面を切り取っても絵画のような強烈な美意識に満ちた映画と言えるでしょう。 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオはもちろんイタリア人ですが、ジャーマン監督はイギリス人で、俳優陣もイギリス勢、勿論言語も英語ですし、あえてイタリアには拘っていないように思えました、カラヴァッジオ=D・ジャーマンと受け取れる映画でもあり単なる伝記映画を超えたD・ジャーマンの表現世界を創りだすというアート性の高い映画になっています。 カラヴァッジオのモデルとなった男性たちがポーズをとる、美しい男たち、中性的な女、映画を観ている観客にはその感性がゲイのものだとわかる、ルネッサンス絵画とは違いバロック期独特の光と影のリアリズム。 映画も光と影を意識した動く絵画ともいうべき映像美。 ゲイの感性はもちろんD・ジャーマンのもの、52歳でエイズで亡くなった自身を投影した映画に間違いないでしょう。 その映像世界は現実性を排除し、時代考証など全くなく、監督の感性の赴くままに、タイプライターやら現代の服装、電卓、車、雑誌、タバコ、諸々の”今”をミキシングしてあえて超越的な世界を構築している。 何を訴えたいのか伝わってくる”感動”というようなものはないが、一人の表現者が追及する”美”の世界がカラヴァッジオの人生の終末と重なって強烈な個性を放っています。 勿論監督オリジナル脚本であり、スタッフ・キャストともD・ジャーマンの色で染め上げています。 カラヴァッジオには英国人そのままのナイジェル・テリー、そして本作で映画デビューした監督のミューズ、ティルダ・スウィントン。 ジャーマン監督の常連キャスト。 そして、ショーン・ビーン、デクスター・フレッチャーと、ゲイである監督の好みのわかるキャスト、特に青年時代のカラヴァッジオ役のフレッチャーのいかにもの魅力はどうだろう、背筋がゾクっとする色気がある。 そしていつもタッグを組むサイモン・フィッシャー・ターナーの現代的な音楽もアンバランスの妙が巧い均衡を保っています。 コアなファンが存在するのがわかる、感性で味わう映画でしょうか、ゲイの美意識に共感できる方(?)なら大いに楽しめると思います。 ティルダ・スウィントンはお気に入りの女優さんですが、本当にこの時代の絵画から抜け出たような中性的な美しさが有ります、今も変わらず美しい、知性に裏打ちされた美しさでもあると思います。 カラヴァッジオの作品はふんだんに見せてくれますし、この時代の絵の具の制作過程も興味深く、美術ファンにはおすすめできます。

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