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狩人

狩人

OI KYNIGHOI/THE HUNTERS

172

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5.0

ギリシャ再生のための分析

1977年。テオ・アンゲロプロス監督。大晦日に雪山で狩りを楽しむ男たちは死体を発見してしまう。49年に終結した内戦の死者としか思えないその死体についての調査の過程で、人々の過去や内面が暴かれていく。新年を迎えるにあたって自らの過去を振り返った人々がとった最後の手段とは。 社会のエスタブリッシュメント層である男たち女たちが抱える羞恥心や自責の念をこれでもかと暴いていく映画はギリシャ社会の分析映画といえる。個人の精神分析ならぬ現代ギリシャの社会分析。根底にあるのは、民主主義発祥の地のはずのギリシャで、民主主義がないがしろにされているという憤りだろう。内戦の正義は共産党系の反乱軍にあったという前提(実際は政府軍が勝利)。実際に49年以降この映画ができるまでのギリシャでは、アメリカが援助する王政や軍事独裁に対して民衆が抵抗するという歴史を歩んでいる。そしてほぼこの映画と前後してまがりなりにも民主体制になって現在に至っているのだから、この映画はギリシャ社会が自らの過去を振り返って清算する道筋を示す、すばらしいタイミングで制作されたといえる。 もちろん、映画のエンディングが再生を手放しで喜べるものになっていないように、現実のギリシャも問題含みなのは昨今の債務問題でも明らか。映画は分析によって問題の在りかを示すだけで処方箋までは出さないのだ。いちいちシーンが美しく、ため息が出そうな映画。

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