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カルメンという名の女

カルメンという名の女

PRENOM CARMEN/FIRST NAME: CARMEN

85

tk

5.0

ネタバレ映画鑑賞という名の「受難」

「カルメンという名の女」を観るのは約20年ぶりくらいになるだろうか? 
高校時代に深夜のTVで観て、その後、映画館でも何度も観ている。
 VHSソフトも所有している。 だが、約半年前に久しぶりに観るためにVHSテープのデジタル化を試みたところ後半でデッキにテープが詰まってしまった。 ということで、発売中のブルーレイディスクを購入することを考えたが、どうやら日本版に問題があるようで、買わずにいた。 最近になって、Amazonのレビューでアメリカ版のブルーレイディスクは高画質とのことを知り購入に至った。 (こうして海外で発売している版も簡単にAmazonJAPANで購入できるとはいい時代になったものである。) タイトル:First Name: Carmen [Blu-ray] 
販売:Kino Classics こちらを観ての感想である。 
とはいえ、これには、日本語字幕はない。
 だが、だいたいの話はわかるだろうと思ったが、やはり日本語字幕はあった方がよい。

 ただ、今回観て改めて思うのは、「映画=光」ということだ。 
ところどころに挟み込まれる「波」、「車のライト」のカット。 
そのような暗示めいたカットも含め、この映画の断片はどこを切り取ってもひどく美しい。 もちろん、マルーシュカ・デートメルスも…。 

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を演奏する集団。
 テストを繰り返す様に引き込まれる。 

この映画は「音」もいい。 
序盤ゴダール自身が家具などをバタバタと叩くシーンがあるが、「映画=音」でもあることを思い知らされる。

 多くのゴダールの映画は難解であるものの、この映画はともかくおおまかなストーリーがある活劇であるため、とても楽しめる映画のはずだ。 
無論、こんなもの映画ではないという方々が多く存在するのは承知だが、少なくともワタシを含めた世界の数%の人々は、ゴダールの虜になっている。
 多様性を認めようという世界の動きの中で、ゴダール映画こそさまざまな要素を含み、2020年代にあっても決して色褪せない。

 ゴダールの商業映画回帰後の作品の中では、「パッション」「ゴダールのマリア」と並び比較的、わかりやすい部類に入る。
 そして、この3つの作品に通底するのは、「受難」というテーマであろう。 
劇場のスクリーンではなく、自宅の大型のモニターで映画を観ることができるようになった現在。
 そして、このような高画質で何度も鑑賞できるようになった現在。 
何度も観たとしても、寛容さとは程遠いが、この「受難」は、1980年代より2020年代に突入した現在こそ、発見されるべき映画である。
 そして、観客である我々も鑑賞という「受難」の中で堂々巡りさせられるわけだ。
 この北米版のブルーレイディスクは、いわゆる「完全版」である。 「ヘア解禁版」ではなく、ボカシは一切ない。
 これまでの過剰なボカシに隠されていた部分が明らかになった。
 かつての日本版のシャワーのシーンは、ボカシによって消されていた行為を字幕で説明していたが、実際に見せなければ映画ではない。 
その意味でも、この映画を今観ることは、現在性があるということだろう。

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