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カルメンという名の女

カルメンという名の女

PRENOM CARMEN/FIRST NAME: CARMEN

85

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5.0

「カルメン」になっていく、名前以前の誰か

DVDで大画面で見てよかった。海の美しさがすばらしいです。 古典的なカルメンを現代的にやるのではなく、「カルメン」という名で思い浮かべてしまう女性像を、いかにすれば新たに映画にできるのか、という映画です。映画のなかのカルメンが「名前以前の私って・・・」と悩んでいます。普通それはカルメンを演じる生身の役者自身のことでもあります。生身のデートメルスが映画に撮られた瞬間に映像になって「カルメン」になってしまう。映画と現実の微妙な関係。映画を作るとはどういうことか、というゴダール監督のいつもの問いですね。 一応あるストーリーは、映画制作と見せかけて強盗をする若者たちというアクション映画的なものと、その中のカルメンという女性に偶然出会ってしまった警官とその警官を好きなクラシック奏者の女性、という三角関係もどきです。 すばらしいのは音の使い方。セリフ、引用、クラシック、波の音。このいずれかまたは複数が、映っている映像と微妙に関係をずらしながら流れています。映像はひとつ、音楽は複数。映像の唐突なカットつなぎ、音楽の重層的な重なり。感動的! あとは、自分が監督する映画に出演することに戸惑っているようなゴダール本人も見ものです。「映画のなかに入ってしまった、その映画をつくっている私」。それに、随所で言及されるほかの映画作品への愛。ラストのセリフ「それを暁と呼ぶ」まで映画のタイトルです(ブニュエル、1955)。細かい!

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