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川の流れに草は青々 (1982)

在那河畔青草青/GREEN, GREEN GRASS OF HOME

監督
ホウ・シャオシェン
  • みたいムービー 8
  • みたログ 36

4.00 / 評価:9件

笑って泣いた、懐かしき少年時代

  • lamlam_pachanga さん
  • 2010年7月17日 0時20分
  • 閲覧数 644
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

台湾映画界に生まれたふたつの巨星。

侯孝賢(ホウ・シャオシエン)と楊徳昌(エドワード・ヤン)。

台湾映画界自体の歴史は古くからあるものの、大陸の中共を意識する国民党の介入が過ぎたせいかその発展は遅れていました。その状況を一変させたのが89年に侯孝賢が発表した『悲情城市』。台湾国内はもとより、世界の耳目を集めたこの傑作の登場により、閉塞感の強かった台湾映画界はようやく陽の目を見ます(91年には楊徳昌の『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の登場が世界における台湾映画の地位を決定付けます)。彼らふたりの映画はこれまでの(政府支配を受けた)旧態然とした作品とは明らかに一線を画し、その潮流は「台湾ニュー・シネマ(新電影)」と呼ばれました。

かく言う私も、この『悲情城市』(と『牯嶺街少年殺人事件』)が台湾映画との出会いでした。それだけに、私にとっての侯孝賢(と楊徳昌)は特別な存在なのです(そして、恐らくは大半の日本人にとってもそうだと思います)。

本作は、そんな侯孝賢初期の作品(長編第三作)。

アイドル映画監督として人気が出始めていたこの当時の侯孝賢は、台湾東北部(内湾)の朴訥とした背景を舞台に、自らこの映画の脚本を手掛けます。それは、誰しもが通り過ぎていく少年期に想いを馳せた、郷愁感溢れる児童映画。

期間限定で「内湾小学校」の臨時教諭を務めることになった青年教師と、そのクラスの児童たちの交流を中心に、環境保護のテーマも絡めたこの作品。

その画面は、青年監督であった侯孝賢自身と重なる様に、実に瑞々しい魅力を湛えています。

自然が共にある田舎の村で、そこかしこに溢れる子供たちの声。

その声に包まれて過ぎていく、青年教師の時間。

私は生まれこそ昭和でも、「あの時代へのノスタルジー」を感じたことはありません。私にあるのは、自らが通り過ぎてきた「少年期への想い」だけです。自分の過去を振り返るのは何だか気恥ずかしいものですが、誰しもが、「笑って、泣いた」過去を通り過ぎてきたことでしょう。

この映画は、普段は自分でもどこにしまい込んだのか忘れている、そんな想いを呼び起こしてくれます。

侯孝賢は皆が知る通り、この映画から7年後には『悲情城市』で内省人を弾圧してきた台湾の歴史を弾劾した人物です(彼自身は外省人であるにも係わらず)。そして、その映画が台湾映画の一里塚となったこともあって、未だに彼の代名詞的傑作と位置付けられています。

私は『悲情城市』を傑作と呼ぶ声に同意しながらも、それをもって侯孝賢を語ることには納得出来ません。

侯孝賢が、己自身と祖国である台湾を省察してみせたのは、事実上あれ一作です。

確かにその目線は本質を射抜く怜悧さを併せ持ち、我々観客の安易な感想をも包み込んでしまうほどの静寂に満ちた物語でしたが、私にはむしろあれが例外だったと思えるのです。

本来の侯孝賢は、この『川の流れに草は青々』や、その後の『坊やの人形』、『風櫃の少年』、『冬冬の夏休み』等の作品群に代表される様に、「淡い記憶に霞む出会いと別れ」を描き続けてきた人で、積極的に台湾社会への眼線を取り込んでいた楊徳昌とは対極的な位置にいます。確かに『悲情城市』を境に緩やかな変化も感じさせますが、基本的には彼の映画に溢れるのはいつも「いつかどこかで味わった懐かしさ」。私は、それこそが彼特有の魅力だと思うのです。

先に述べた通り、私が『川の流れに草は青々』を観たのは『悲情城市』後のことです。そのギャップはとても大きかった。それだけに、画面一杯に童心がはじけるこの映画に魅了されたのを、現在もはっきりと覚えています。

この映画に溢れるのは若かりし侯孝賢の演出ばかりではありません。主演の阿B(ケニー・ビー)、その恋人を演じた江玲、そして腕白三人組(顔正國、鄭傅文、周品君)をはじめとしたクラスの子供たち(陳靜慧、張鋤非)・・・キャスト全員が自然体の魅力をはじけさせています。

侯孝賢に馴染みがない方。

台湾映画を敬遠されている方。

この映画を未見の方。

どなたであれ、私は迷わずお薦めします。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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