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眼下の敵 (1957)

THE ENEMY BELOW

監督
ディック・パウエル
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4.47 / 評価:196件

男の文化

  • mitubajusiro さん
  • 2013年6月4日 21時13分
  • 閲覧数 775
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

米国は男の文化だな、って、つくづく思います。

ドイツ軍のUボートと米海軍の二等駆逐艦との戦いを描いています。
双方の艦長が腕比べをします。

西部劇に代表される男の気骨、友情がここにもあります。

艦長の登場の仕方が良い。
駆逐艦の艦長は就任以来艦長室から一歩も出ない。水兵たちは「船酔いだ」とか「素人だ」とか陰口をささやいている。
ところが「すわ敵潜!」となると、即座に艦長室を飛び出して手練手管の指示を下し、またたくまに乗組み達の信頼を得る。
頼りがいのある兄貴分的な艦長である。

一方のUボートの艦長は、副官を部屋にさそって、ウィスキーをあおる。
ウィスキーには重油とカビの臭いが染みついている。潜水艦の匂い、戦場の匂いである。
憤懣をぶつけながらあおる。
「酒があると何も考えない。だから眠れる」と戦いに備える。
飲みっぷりが様になっていて、これがカッコ良い。豪胆な父性の艦長である。

二人の艦長がゲームのように相手の出方を探りあいながら、次の手を繰り出しあう。
探知された潜水艦とそれを追う駆逐艦の戦いだから主導権は駆逐艦側にある。潜水艦はひたすら逃げるだけ。
最大のピンチを逃れた直後、駆逐艦の進路を読み、深度を急速に浅くしたUボートが必殺の扇状斉射をすると、一本が見事に命中。
致命的ダメージを受けた駆逐艦は総員退去を命じながらもカモフラージュし、Uボートを浮上砲戦に誘い込みます。
わなにかかったUボートは駆逐艦との砲戦に引きずり込まれ、あえなく大破。
自爆装置を仕掛けて総員退去となります。

…と、まあ、こう書くと、なかなかスリリングな戦場シーンの連続と思われるかもしれませんが、実際見ていると、そうでもなく、
いろいろと突っ込みどころは満載です(潜水艦が簡単に浮上するわけがないし、魚雷が命中した二等駆逐艦がいかに米海軍のダメコンが優れているとはいえ、残存性が鬼すぎる)。

戦闘シーンの描写は、厳しい戦いを凌いだ双方の艦長の引き分けという美談と、国境を越えた海の男たちの厚情で締めて、気分良くラストシーンに導くための素材に過ぎません。
途中、いろいろと処世訓がセリフの中に入り込みます。文学的ないいセリフも多く、大人向けの話にしてくれています。それがこの映画の見所、聞き所といえましょう。

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Uボートの艦長はナチスが嫌いの国軍勇士です。
第一次大戦のUボート乗組み体験を昔語りに
「良かった。人間性があった。今の潜水艦には人間味がない。全部機械がやってくれる」
と愚痴をこぼし、今次大戦には目的性が不明確で乗り気になれない、と批判します。
乗組みの中のヒトラー信奉者に対しては「やれやれ」といった冷ややかな視線を投げます。

スポーツマンシップと勇者同士の戦いを讃える中で、唯一の敵が「ナチス」です。
その看板さえとりはずせば、武勲赫々たるドイツ国防軍と米海軍の戦歴だけが残ります。
戦後のドイツは、そのような価値観を受容して国際社会に復帰しました。

ひるがえって、わが日本には「ナチス」は存在しません。それに代わるものとして「A級戦犯」が祭り上げられています。
しかし「A級戦犯」と「ナチス」との違いは猿にでも分かります。
果たして、太平洋戦争でこのような映画が出来るのだろうか、という思いをラストで感じました。

ただ米国映画の「何でもあり」的な面白さは、「トラトラトラ」に見られるような、
「武士の勇敢さと果断」
への賛意も示してくれています。
日本の戦後国際社会での地位と発言の権能はそのあたりで保持されています。
現在、日本に対する敵性勢力は当然ながら、それをスポイルするための様々な攻勢を仕掛けています。

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さて、冒頭の、米国が男の文化なら、日本はどうか。
建国250年の米国と2700年の日本とは国の成り立ちが異なります。
男の文化があったり、女の文化があったりと交錯しています。
言えるのは、このような男の文化を明朗活発に讃える映画が、今の日本では出来ないこと。
せいぜい、斜めに構えたり、宣伝目的の「ヤクザ映画」くらいです。
それが、時代を自覚させてくれます。

星三つにしては、つい書き込みが長くなってしまう映画でした。

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