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カンタベリー物語

カンタベリー物語

I RACCONTI DI CANTERBURY/THE CANTERBURY TALES

112

5.0

いまある天国

83点 8つのお話をまとめた映画。 その物語はどれも小咄といった感じで、笑いのための演出で描かれている。 が、パゾリーニ映画だけあって、ただの笑える映画ではない。 「快楽にこそ喜びがある」 「学者に賢人はいない」 「聖書は処女をまもれとは言ってない。道具は使うためにある」 「硬直したり柔らかくなったり、快楽は永久なり」 といった快楽主義への誘いのニュアンスに全体が満ちている。 7つめの話では、「金」=「未来への幸福の預け」=「現在の喜びへの軽視」=「死」といった刹那主義のニュアンスも感じた。 快楽、刹那、つまりは人の官能を讃えた物語だ。 しかし、官能を讃えるということは官能の衰え、つまり「老い」という絶対的悲劇を、残酷にも証明してみせることでもある。 老いた人が馬鹿をみて、若い人が愉しむ、という構図がこの映画にはなんどもあらわれる。 7つめの話、世界中を旅しても若返る方法をみつけることができなかった老人の歎きに、「老い」という悲しみへの感は極まっている。 人にあたえられた若さという祝福、老いという呪い。それを一点のあまさもなくこの映画は描いている。 そして最後、笑いと恐ろしさの間のニュアンスで表現された地獄絵図には「勤勉、良識、善人、悪人、そんなことはどうでもよく、人の生を愉しまなかった者は地獄に堕ちる」といった言葉を投げかけられたような気持ちになった。 あくまでそれは自分の観方であって、パゾリーニの映画はニュアンスばかりで論理はめったにあらわれないから、観る人によってだいぶ印象は変わるだろうと思う。 パゾリーニ映画を初めて観る人は、論理的にこの映画を観ようとして疲れてしまうと思う。構えず考えず、ただ眺めるだけという観方をオススメします。 官能至上主義なところがある自分には、この映画はとても性にあった。 自分のなかでは「ベニスに死す」の姉妹編ともいえる傑作。

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