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カンタベリー物語

カンタベリー物語

I RACCONTI DI CANTERBURY/THE CANTERBURY TALES

112

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5.0

あまりに即物的な

1971年。ピエル・パオロ・パゾリーニ監督。イギリス中世の詩人チョーサーの同名短編集からいくつかを映画化。喜劇的な風刺劇として当時の性風俗や宗教的・政治的権威のパロディとして楽しめます。しかしもっとすごいのは、パロディなら元にある権威や常識を「意識」してそれらに反発するなり茶化すなりするのですが、ここにはそれがまったくない。意識の世界ではない。 だから同性愛や姦通や異常な性欲を描いてもまったく「エロ」ではない。性器そのものが写っている裸体がたくさん出てきますが、そこに性的な意味や隠微な心情や恥ずかしさはない。美しささえない。それらは「言葉」や「おなら」や「おう吐物」などと等価な「モノ」でしかありません。ただの身体の一部。だからまったく「エロ」ではない。ボカシがないも当然です。 代わりに美しいのは朝日であり自然の緑でありうごめく群衆の姿です。なにかとてつもなく即物的な、ずしんと重いものに触れてしまった感じ。すごい映画だ。

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