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間諜X27

間諜X27

DISHONORED

91

一人旅

4.0

ディートリッヒ、ネコちゃんになる。

ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督作。 一次大戦最中の欧州を舞台に、オーストリアの女スパイとなった娼婦が辿る運命を描いたドラマ。 戦争で夫を失った娼婦がスパイ(X-27)となり、キツい表情と濃く派手なメイクと服装で敵国の将校に巧みに接近していく。将校の目の届かないところで、室内を物色し機密情報だけを盗むのだ。X-27は表情を一切変えない。生きる希望も目的もないかのように、ただ淡々と任務を遂行していくのだ。 女としての自己とスパイとしての自己。その狭間でX-27は揺れ動く。夫の死後娼婦となり、誰からも愛されず孤独に生きてきたX-27。封印したはずの女としての感情が、任務の過程で再び湧き起こってくる。自身の女心を確信し、うっすらと笑みを浮かべるX-27の表情が印象的だ。 時代に翻弄され、最愛の夫や自分自身の感情さえ奪われながらも、そうした社会の束縛に囚われず、一人間、一女性としての生き方を貫くX-27の姿は戦場で戦う兵士以上に勇敢に映る。娼婦時代の派手な服装を身に纏い、自信に満ちた態度と表情で戦争という非情な現実に真っ向から立ち向かっていく姿は、潔いかっこよさがあり、切ないのだ。 そして、X-27を演じたマレーネ・ディートリッヒの圧倒的存在感。派手な服装で敵将校を強気に誘惑するイメージ通りの演技を見せたかと思えば一転、メイドに変装し、薄化粧と質素な服装で茶目っ気たっぷりに敵将校を手玉に取る。質素なスタイルのディートリッヒを見るのは本作が初めてで、それまでの派手なイメージからは全然想像がつかない。顔つきまでまるで違う。すっぴんに近いディートリッヒは意外にも童顔だ(白鵬似?)。仕草も印象的。“ミャ~オ”と猫マネ声を出してみたり、スカートで敵将校の頭を包み込むあどけない姿は新鮮で、不覚にも可愛いと思えてしまった。

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