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シクロ (1995)

CYCLO

監督
トラン・アン・ユン
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  • みたログ 179

3.59 / 評価:27件

自分自身への救済と清算

  • 一人旅 さん
  • 2013年11月13日 21時05分
  • 閲覧数 1204
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

第52回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。
トラン・アン・ユン監督作。

ホーチミンに住む青年は女親方からシクロ(自転車)を借り、生計を立てている。しかしヤクザに目を付けられた青年はシクロを強奪されてしまう。女親方の計らいで青年は詩人と呼ばれる別のヤクザ(トニー・レオン)に匿われるが、やがて青年自身ヤクザになることを申し出る・・・。

純粋な青年が次第に狂気の世界に支配されていく過程が印象的だ。
ヤクザになる以前の青年に暴力的な一面は一切見えない。だがヤクザになった青年は釘の付いた棒で人を殴る。さらには、火炎瓶を用いて建物を中にいる人ごと焼き尽くしてしまう。
やがて自己嫌悪に陥った青年は麻薬に溺れていく。
青いペンキを全身にかける青年の姿は、失われた純粋さを取り戻したいと願う青年の叫びのようだ。
また、金魚を口に咥えるシーンは身動きが取れず息もできない青年自身を象徴しているようにも受け取れる。

詩人は青年だけでなく、青年の姉をも暗い闇へと導いていく。
青年の姉に変態行為の数々をさせ金を稼ぐ詩人。
しかし、詩人の心の中に残る僅かな人間性が、暴力という形ではあるものの、垣間見えるシーンもある。
青年がヤクザになりたいと申し出た際も、詩人は怒り青年を張り倒す。
ヤクザである自分と同じ道を青年に歩んでほしくなかったのか。
そう考えると詩人は不思議な存在だ。やってる事(売春、暴力、麻薬)は悪そのものだが、どこか良心が残っているようにも見える。
もしかしたら、青年をヤクザになる前の自分と重ね合わせていたのかもしれない。
堕落しきってしまった自分を嫌悪するあまり、純真な心を持つ青年を自分の世界に巻き込むことは良しとしなかったのだろう。

一度悪に染まると抜け出せない。
抜け出そうと必死にもがこうとするのは、堕落と悪の中にひっそりと眠る良心や人間性が
そうさせる。
終盤、詩人が下したある決断は自分自身への救済だった。
悪から抜け出すためにはその方法意外に存在し得なかったのだ。

詳細評価

物語
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