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太陽と月に背いて

太陽と月に背いて

TOTAL ECLIPSE

112

byn********

4.0

ネタバレこんなに名作だったのね

大昔、途中で見るのを止めたままだったが(ヴェルレーヌが受け!で脱落) 2014年蜷川舞台を見て感動したので、映画も再視聴してみた。 大失恋をしたり、だめんずにハマってしまった経験をした後に見返すと、感動の度合いがかなり違う作品なのだと思う。 若妻マチルドも、美少年ランボーも、どうしてヴェルレーヌがいいのか理解しがたい…。しかし恋愛というものは必ずしも釣り合った相手とするものではないと分かった今となっては、そんなところもやけにリアルだ。 文学的な野心を持っていたランボーは、打算からヴェルレーヌの愛人になったものの、ともに過ごすうちに離れがたくなってしまったのだろう。ランボーは情が深い人だったのだと思う。そしてヴェルレーヌよりもずっと純粋だった。 だからヴェルレーヌが財産家の若妻と別れられず、口ばっかりで生活力がなく、酒を飲んでは暴力をふるい、そのあとで平身低頭謝るというクズでも、情がわいてしまって別れられなかったんだろうなあ。でも苦しくて、相手を傷つけて自分も傷ついていたのだろう。 若妻マチルドも気の毒だ。子供までなしたDV旦那は男の愛人と出奔してしまい、やり直すための移住案まで携えて夫を迎えに行ってやったのに、やっぱり男の愛人と出て行ってしまう。悲惨。 妻とも別れられず、ランボーとも別れられないヴェルレーヌは、ランボーが去ろうとすると銃で打ちやがって監獄行き。もーほんと情けない。 でもそんなクズが出獄後、再び会ってあげるランボーにはまだ相手を思う気持ちがあったのかな。 でも、肉体を選んだヴェルレーヌに絶望したんだと思う。 肉体はやがて滅ぶけれども、精神は永遠だ。ランボーが俗物極まりないハゲオヤジ相手に永遠を求めてたんだと思うと、落涙せずにいられない。 すっかり老いぼれたヴェルレーヌのもとに、16歳のランボーの幻影が現れるシーンは胸が締め付けられる。やっとヴェルレーヌの心にランボーの永遠が届いたのかもしれない。時すでに遅しなんだけど。 でもどんなに泥沼で終わったとしても、人生の終わりの頃に去来する相手がいない人生はもっと悲惨だ。 人の心を深く耕すいい映画だと思う。

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