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ファーゴ

ファーゴ

FARGO

R15+98

あきもと_y

4.0

妙にユルい独特の空気感

予備知識ゼロで観に行ったので、正直、はじめのうち観る足場が定まらず居心地が悪かった。いったいこれはミステリー?バイオレンス??ピカレスク???それともゴシックホラー???? どう観ればよいのと言う感じ。その足場の悪さの原因はウィリアム・H・メイシー演じる中年男ランディガードの情けなさ。このヒト、ストーリーの中心であり事件の張本人、いわば諸悪の根源なのだがなんとも頼りない小心者。しかし途中からこれがすべて作る側の計算とわかる。そう思って観るとこれが実に憎めない。 んでこのランディガードをはじめ他の犯人も負けず劣らず?なんとも脱力系のしまりのない連中ばかり。おそらく筋金入りの極悪人は1人しかいないのだが、その1人も随所でなんとも調子の外れた行動を繰り返す。  んでその引導を渡す探偵役の女署長が実にイイ。この署長さんはなんと臨月の大きなおなかを抱えてつわりの吐き気を覚えながら登場。ちなみにフランシス・マクドーマンドさん、どっかで見たなぁ…って思ったんですか見終わって調べるまで『ノマドランド』の人だとは気づきませんでした。そしてその署長のダンナ、FOXチャンネル観てるとよく出てくる(気がする)ジョン・キャロル・リンチがまた実にイイ。事件のことなんぞあまり眼中になく、自分の絵が切手に採用されるかどうかに気をもんでる。でも実は妻を心から愛してて、妻(署長)もそんな夫の存在が心の支えになってるという、ここだけ取り上げるとなんともアットホームな雰囲気。この感じ、どっかで見たなぁ…と思っていてあとから想い出しました。少年のころ淀川長治さんのTV(日曜洋画劇場)で観たヒッチコックの『フレンジー』(1972年)。指をポッキン…の演出で有名なやつですが、あの警部夫妻の雰囲気とスゴク似てるかなと。  そう思ってみると、死人も複数出てけっこう陰惨な話なのに、どこか間の抜けたユルい空気感が全編に漂ってるのは後期のヒッチコック作品に通じるものがあるかもしれない。いずれにしても町山智宏さんの薦めに乗ってよかった、妙に印象に残った一本。

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