画面良し、音楽良し。物語はどうでもよし。
- 百兵映 さん
- 2016年3月1日 15時42分
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「London1663」という風景画をバックにちょっと長めの解説字幕が出る。
―― 王政復古の幕開け。科学や芸術が花開き、官能をむさぼった時代。しかし一方で天災や疫病が猛威をふるい、科学と迷信が対決した時代で、これはそんな時代の光と闇を生きた一人の男の物語り ――。
「一人の男の物語り」は、どちらかというとどうでもよかった。邦題の『恋の闇 愛の光』に相当する部分だ。「官能をむさぼった」お医者さんが「科学」と「愛」の医療に転身するという「物語り」だが、どうもこのテの肉食系の「むさぼり」や「対決」というのは、草食系の(しかも老人の域の)我々には見ていて疲れる。一部、『危険なメソッド』のユング的メソッドがあって、そこにだけ見るべきものがあった。
お目当ては原題の『王政復古Restoration』の部分だ。歴史の勉強だ。これと前後してフランスの王政復古Restaurationの社会模様を『ゴリオ爺さん』で見たからだ。二つの国の王政復古の違いを分かる程に詳しくはないけど、その時期の王族(貴族社会)と市民社会(庶民)が見られたらいい。映画だから、史跡巡りとは違って、宮廷内部から町並み、往来する人馬まで、それも動いてみせて、聞かせてくれるのだからありがたい。DVD100円のレンタル料でしっかり見学させてくれるのだから、申し訳ない程ありがたい。
確かに ―― 科学や芸術が花開き、官能をむさぼった時代。一方で天災や疫病が猛威をふるい、科学と迷信が対決した時代、そんな時代の光と闇 ―― が、文章テキストでは伝わらないものがリアルに分かった。
こちらのお医者さんとフランスのゴリオ爺さんでは、それぞれ国も立場も年齢も違うけど、そう広くもないヨーロッパの隣国同士、混乱期の肉食男子、私には二本の映画合わせて「二人の男の物語り」とひとまとめに見えてしまう。
そうは言いながら、音楽は断然こちらイギリスの方がいい。それは好みの問題でしかないが……、BGMに使われた「ラ・フォーレ」の様々なバリエーション、これだけでも聴く価値がある。宮廷内音楽で演奏されるヘンリー・パーセルの管弦楽曲。LPやCDで聞くのより遥かにいい。こういう曲はこういう時、こういう所で鳴っていた曲だった。映画でいい、宮廷音楽、バロック音楽というのは、時代考証をされた映画で聴くのが断然いい。
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