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交通安全のプロパガンダはもう飽きた
- tyaichiro さん
- 2016年7月15日 17時56分
- 閲覧数 1841
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- 総合評価
セクシーな美女が現れるやいなや、やおら自分の上半身を車に擦り付け興奮して喘いでいる。異常な雰囲気。『車好き』というのは一つの趣味嗜好だと思うが、この『好き』が行くところまで行った結果が今作の異常な世界だった。主人公たちは、とても不謹慎な事に『交通事故』に性的興奮を覚えるようになる。
『交通事故に性的興奮を得る男女』と書くと、時間を止めるアダルトビデオのようなくだらない面白映像を思い浮かべるかもしれないが、今作は、そんなビデオより官能的で美しく、ある夫婦の再生、人間の『愛』を誠実に描いている。交通事故がまるで車と人間との融合、無機物と有機物との融合に見えてきてしまう危険さがこの映画にはあった。
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お互い別の人と性行為をした話をする夫婦、どうやらこのカップルは完全に倦怠期で、愛も生きる実感もなく、行為自体にも快楽を感じていない様子。
夫はある交通事故がきっかけで新しい快楽に目覚めることになりますが、骨折した彼のギプスが体と同一化しているように見えるのです。今作では、車の解体がまるで外科手術に見えたり、オイルが体液に見えたりと、まるで金属の車が生きているような描写は、さすが理系監督のデヴィッド・クローネンバーグ。
今作のカーチェイスは、日常的でリアル、恐怖の物として描かれている印象。
J・G・バラードによる原作は、ゴダールの「ウィーク・エンド」による影響が大きいことが指摘されており、この「ウィーク・エンド」は実にカー・クラッシュが映画における見世物として娯楽化することをある種、予言した作品でもありました。そう考えると、今作の交通事故に魅了される登場人物たちは、「ワイルド・スピード」や「マッド・マックス」にハラハラドキドキする観客と変わらないのではないか、ただ『好き』の境界線が少しおかしくなっただけではないか、とも思ってしまいます。
つまり、この世界はそんなに異常ではなかったということです。
詳細評価
イメージワード
- 泣ける
- 恐怖
- 絶望的
- 切ない