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奇跡 (1954)

ORDET/THE WORD

監督
カール・テオドール・ドライエル
  • みたいムービー 16
  • みたログ 87

4.38 / 評価:21件

神の宿る映画

  • 一人旅 さん
  • 2018年10月18日 23時54分
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

第16回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。
カール・テオドール・ドライエル監督作。

1920年代半ばのユトラント地方の農村を舞台に、裕福なクリスチャン一家を待ち受ける悲劇と奇跡を描いたドラマ。

二次大戦時、ナチス・ドイツによって虐殺されたデンマーク人牧師:カイ・ムンクが1925年に書き上げ、1932年に初演された舞台劇「ordet(御言葉)」をデンマークの巨匠:カール・テオドール・ドライエルが映像化した映画史上に残る傑作室内劇で、シンプルな作劇ながら信仰の本質を力強く問いかけた姿勢に打ちのめされる名編であります。

1920年代中頃、デンマーク西部・ユトラント地方の農村が舞台。敬虔なクリスチャンである父親:モーテンは、信仰心の無い長男:ミケルとその妻:インガ、神学にのめり過ぎたことで正気を失っている次男:ヨハネス、宗派の異なる仕立屋の娘との結婚を望む三男:アーナスと平穏に暮らしていた。ある時、アーナスの結婚問題を巡って、モーテンが異宗派の仕立屋の家で口論している最中、臨月のインガがお産で死に瀕しているとの報せが入る。急いで自宅に戻ったモーテンは家族と共にインガの無事を祈るが…という物語で、様々な形で信仰の本質を問いかけながら、一つの「奇跡」をもって確かな神の存在をまざまざと知らしめていきます。

ベルイマンを彷彿とさせる神の気配が全編に亘って感じられる神秘性の極致と云える宗教映画で、家具や装飾、人物配置を含めた一つ一つの画面の構図や長回し撮影の多用、北欧の光の捉え方等、完璧に計算し尽くされた映像の数々は紛れもなく芸術の域に達しています。そして、本作の持つ神秘性を劇的に高める要因として、本来の信仰の在り方から逸脱している事実に気づかない人々と、彼ら全員を一堂に黙らせ解らせる神の「奇跡」の対比が挙げられます。宗派の違いが自分本位な感情的口論に発展し、また一方で長男や医師のように最初から神の存在を堂々と否定する者がいる。一家の主:モーテンでさえも宗派の拡大に長年身を捧げてきたものの、神による「奇跡」はもう起こらないと心の中では感じている。少なからず彼らは、それぞれに信仰の揺らぎや疑いに直面しています。そんな中、次男:ヨハネスだけは最も“神に近い”存在として異彩を放っていますが、家族を含めた周囲の人々は彼を狂人扱いし、彼の言葉に一切耳を傾けようとはしないのです。しかし、狂言廻し的立ち位置だったヨハネスは、やがて神に近い者として一家の信仰を回復する役目を果たしていきます。一家の厄介者から信仰の中心者へと変貌を遂げるのです。

信仰の迷い、信仰の本質そしてそれを全うした者達に訪れる神の「奇跡」。限りなく神秘的で、美しく、力強い「奇跡」の瞬間は鳥肌が立つほどの驚体験として観客の目に焼き付きます。静謐なリアリズムの最後を飾る劇的・神秘的な「奇跡」は涙なくして見られません。

蛇足)
“動き始める時計”で終わるのは、『あるじ』(1925)へのセルフオマージュとも見て取れます。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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