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嘆くな!

嘆くな!

AR DAIDARDO/DON'T GRIEVE

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bakeneko

5.0

ネタバレ牛の角のカップでお酒を飲むんだ!

青春劇「モスクワを歩く」、人生ドラマ「秋のマラソン」、ジュブナイル「ハックルベリー・フィンの冒険、風刺SF「不思議惑星キン・ザ・ザ」等、多くのジャンルで傑作を残しているゲオルギー・ダネリヤ監督が、フランスのユーモア作家クロード・ティリエの「バンジャマンおじさん」を19世紀末のグルジアを舞台に翻案した人間喜劇で、破天荒で人懐っこく楽天的なグルジア人生賛歌を謳い上げています。 19世紀末のグルジアの田舎村で医者をしているベンジャミン青年は、碌に治療費も取らないのでいつも素寒貧で妹夫婦の家に同居させてもらっている。気の良いベンジャミンは様々な患者を面倒見つつ、村人との交流を愉しんでいたが、しっかり者の妹は同じく医者の娘:メアリーをベンジャミンと結び付けようとしていた。メアリーに気があるのは確かだが、お気楽なベンジャミンはなかなか積極的になれない。そのうちに領主で将軍のブルバリと諍いを起こしたベンジャミンは監獄に入れられてしまい…というお話で、マイペースなベンジャミンを狂言回しにして次々と起こる出来事を通して豪放で純朴なグルジア人賛歌を綴ってゆきます。冒頭から様々な民謡が歌われる音楽映画的な愉しさも満載で、オープニング&エンディングを締めるテーマ曲はインド音楽と通じるものがあります。 「落葉」を始めとした、同じくグルジア人のイオセリアーニ監督作を連想させるー軽やかなグルジア人賛歌で、メアリー(アナスタシア・ヴェルティンスカヤ)や領主夫人(Ariadna Shengelaya)を始めとして続々と出てくる日本人好きのするグルジア美女は眼福ものですよ! ねたばれ? 1、長身の人がロバに乗ると足が地面に付きそうだなあ~ 2、メアリーを演じたアナスタシア・ヴェルティンスカヤは後のニキータ・ミハルコフ監督の夫人で、「戦争と平和」のリサ・ボルコンスカヤや「巨匠とマルガリータ」のマルガリータを演じています。 おまけーレビュー項目にないゲオルギー・ダネリヤ監督の傑作の紹介を… 「秋のマラソン:Osenniy marafon」(ソ連:1980年 90分)監督:ゲオルギー・ダネリア 出演:オレーグ・バシラシヴィリ、ナターリヤ・グンダレワ、マリーナ・ネヨロヴァ、エフゲニー・レオーノフ、ニコライ・クリューチコフ、ウラディミール・グラマチェコフ他 1980年の旧ソ連レニングラード(現・サンクトペテルブルク)を舞台にして、妻(ナターリヤ・グンダレワ)と愛人(マリーナ・ネヨロヴァ)の間で揺れる―優柔不断&八方美人的な主人公(オレーグ・バシラシヴィリ)が陥った八方塞状況を、鋭い人間観察とシニカルなユーモアで綴る“人間喜悲劇”の傑作であります。 翻訳者で大学教授のブズイキン(オレーグ・バシラシヴィリ)は若いタイピストのアーラ(マリーナ・ネヨロヴァ)と不倫恋愛をしている。愛人はけじめを希望し、そのことに感づいた妻(ターリヤ・グンダレワ)からも責められ、仕事もうまく進まず、友人や仲間たちは最悪のタイミングで勝手に介入してきて…とトラブルの波状攻撃に追い詰められてゆく…というお話で、 妻と愛人の両方に良い顔をしたい男の本性に男性観客は“そうだよなあ~”と同調できますし、 浮気男を次々と襲う天罰?に女性観客も“もっと虐めてやって!”と膝を乗り出す作劇となっています。 跳ね橋が主要交通を担うレニングラードの街の様子や、廊下の先が霞んで見えないほどの巨大な大学、思想統制が介入する出版事情、デンマークとの交流、居住環境…といった旧ソ連の1980年代も活写されていますし、ロシア人のお酒の飲み方や人情の機微も良くわかる作品で、 浮気男の悪戦苦闘を生き生きと描いてートリュフォーの「柔らかい肌」や「逃げ去る恋」、 インテリ層の恋愛コメディとして―ウディ・アレンの「マンハッタン」 も連想させる洗練された語り口の映画で、振出しに戻ったラストではまだまだ続きを眺めていたい気分にさせられますよ! ねたばれ? 1、勧められたウオッカは一気飲みしなきゃいけないんだ! 2、本作の主人公を演じた名優:バシラシヴィリは、「嘆くな!」のメアリー役のアナスタシア・ヴェルティンスカヤと「巨匠とマルガリータ」で共演しています(悪魔役!) 3、1985年の宇宙事故を扱った傑作:「サリュート7」(2016年)の劇中にも“「秋のマラソン」は好きかい?”というセリフが出てきますよね!

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