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極北のナヌーク

極北のナヌーク

NANOOK OF THE NORTH

78

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5.0

ドキュメンタリーとは何か

1922年。ロバート・フラハティ監督。カナダのイヌイット(当時はエスキモーと呼ばれた)の生活を撮ったドキュメンタリーの元祖。「ナヌーク」という狩りの名人一家が、白人との交易所に始まり、真冬に雪で作った家で眠るまで。イヌイット探検に随行した監督が、その後も足を運んで撮った渾身の作品です。「映画」と「現実」に関心があるすべての人がまずはみるべきすばらしい作品。 なぜならば、ドキュメンタリーが優れた編集のたまものだということがよく分かるからです。「サスペンス」としてのセイウチと人間の戦い(対立とその解消)、「同時性」としての働く父と遊ぶ子供(離れた場所のカットつなぎ)、「感情移入」としてのナヌークの主観ショット。どこで切り、どこでつなぐか。どのような編集が「自然」であるのかが探究されています。 また、雪で作る家が完成するときに、光を取り入れる窓(氷)を忘れないことは、いろんな意味で自己言及的です。映画は光の芸術だし、家の内と外を完璧に分けるのではなくて通りぬけるべき光が必要なことは、停止ではなく運動である映画そのものでもあります。氷の窓を内側から磨く奥さん。。。 「文明の側」が「野蛮な側」を被写体にするという、すべてのドキュメンタリーが持つ権力的な側面(カメラは常に「文明の側」だけが持っている)は拭えませんが、狩った獲物の生肉をその場で食べる彼らの姿には、「物珍しさ」よりも「生き抜くための力強さ」があふれています。単純に狩りや家づくりの技術に感動しますが、まずは彼らの満面の笑みをごらんあれ!

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