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梁山泊と祝英台 (1963)

梁山伯與祝英台

監督
リー・ハンシャン
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3.25 / 評価:4件

黄梅調映画の代表作

  • lamlam_pachanga さん
  • 2010年8月11日 23時14分
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  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

今日の日本で、黄梅調映画を観たことのある人は極めて限られるでしょう。そもそも、黄梅調映画そのものを知らない人がいても何ら不思議ではありません。黄梅調映画とは、湖北省の採茶劇にルーツを持ち、直接には安徽省の黄梅劇の発展した形を指します。更に言えば、北京の京劇や浙江省の越劇の要素をも吸収した形で発展し、50年代以降、中国本土の映画人によりこれらの地方劇の演目を映画化したものが最初期の黄梅調映画とされます。今日一般に語られる黄梅調映画とは、それらが香港へ流入し、現地映画人の手により広東省の粤劇の要素を加えたもののことで、広東オペラとも呼ばれる映画ジャンルのことです。端的に言えば、一種の歌劇(ミュージカル)とも言えます。

この黄梅調映画の巨匠とされるのが、当時(50~70年代)、香港最大手映画スタジオのショウ・ブラザースに在籍した李翰祥(リー・ハンシャン)。58年に彼が撮った『貂蝉』は香港最初の黄梅調映画であり、翌年、同じく李翰祥による『江山美人』によって黄梅調映画は最盛期を迎えます。

63年、この動きに乗じたのが、当時ショウ・ブラザースのライバル・スタジオであったキャセイ。54年に上海で映画化され、香港でも人気のあった中国の民承説話でもある「梁山伯と祝英代」をリメイクすることを発表すると、ショウ・ブラザースはこれに真正面から競合することを決断(こうした動きは如何にも節操のない香港らしい逸話です)。こうして撮影されたのが本作、『梁山伯と祝英代』であり、監督には当然の様に李翰祥が据えられます。

物語はご存知の方もいるでしょう。

一言で言うなら、これは祝家の一人娘・英台(樂蒂)と梁家の書生・山伯(凌波)の恋物語。

所謂、王道(ベタ)とも言える「報われぬ恋路」を描いたもので、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」とも似通うもの。運命に引き裂かれる男女の恋物語と言うのは、古今東西、誰しもが欲する物語の様ですね(笑)

本作は63年製作のもので、今日の映画に親しんだ向きには取っ付き難いかもしれませんが、それでも見所は沢山あります。何よりもまず、主演の樂蒂(ベティ・ロー)と凌波(リン・ポー)による歌劇(樂蒂の歌は吹替えですが、凌波は本人)。彼女たちふたりの歌と演技は、本作の目玉として客を呼ぶに相応しいもの。

豪奢なセットもそのひとつ。本作は全てがショウ・ブラザースのスタジオに組まれたセットで撮影されているのですが、この造形には同社の凄さが垣間見えると思います。単なる懐古主義かもしれませんが、今日的映像処理による「完璧な画」がもたらす違和感ではなく、むしろ人為的不格好による「不自然さが残る画」の心地好さを味わって頂きたいもの(笑)

それはクライマックスの特撮部分も同様。時代を感じさせるあの手作り感を受け付けない方がいても不思議には思いませんが、私はああいった綻びも、より一層映画の息吹を感じさせるものだと思いますので(少なくとも完璧で味気ないCGよりは)。それにこのシーンはあの円谷英二が担当したものですからね。映画ファンには一見の価値はアリかと。

李翰祥の演出については、本作以外に私が観た黄梅調映画が同監督の『江山美人』だけなので、このジャンルとしてそれが抜きん出たものであるか、正直私にも良く解りません(少なくとも両作共に素晴らしい映画です)。個人的には、歌による物語(現実)からの飛躍を随所に鏤める辺り、歌劇本来の機能を充分に理解しているとは思います(歌で心情を吐露させたりするのは王道)。また、歌と物語のバランスも過不足ないもの。黄梅調映画ではありませんが、後の『金瓶梅』へ繋がるスケール感豊かな演出は確かに垣間見えます。

本作は、映画黄金期の、映画本来の魅力を湛えた黄梅調映画、と言えます。

そこにはスタッフが情熱と労力を傾けた素晴らしきセットを背景に、物語と歌を巧みに主導する演出と、それに応える役者の姿があります。

「東洋のハリウッド」と呼ばれた香港映画の第一次黄金期。

それはカンフー映画でも香港ノワールでもなく、黄梅調映画がもたらしたもの。

黄梅調映画は今日的ではありませんし、歌劇が苦手とする方には薦め難いもの。多少個人的感想に過ぎるコメントが多いのも承知してますが、ともかく、興味をもたれた方には、ぜひともご自分の眼でその魅力を確認して頂きたいと思う映画なのは間違いありません。

ところで、キャセイ製作の『梁山伯と祝英台』は見事に大コケ。本作との違いが何だったのか、こちらもいつかは観てみたいのですが。

詳細評価

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