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都会の女

都会の女

CITY GIRL

77

bakeneko

5.0

ネタバレ戦前から大規模コンバインが有ったんだ!

大都会シカゴからミネソタの農家に嫁いだヒロインが遭遇する田舎と都会のギャップと葛藤を豊かなサイレント表現で描いた“人間+社会ドラマ”で、後にテレンス・マリックの「天国の日々」や今井正の「米」といった名作にも影響を与えた傑作であります。 “農村と都会の相克”をテーマにして、サイレント映画の到達点の一つである傑作「サンライズ」と好対照を成す、ムルナウ監督のハリウッド第三作で、前者が主人公の男の“田舎人の都会への憧憬”を描いていたのに対して、本作は“都会人の田舎生活への期待”をヒロインの思い込みとして描いて、夢と現実とのギャップがリアルに衝突する葛藤劇を見せていきます。 都会の女: メアリー・ダンカンと田舎の男:チャールズ・ファレルの美男美女振りも見所ですが、頑固親父を演じたデビッド・トレンスの存在感が圧巻で、“田舎者は純朴”という都会人の固定観念を木っ端微塵に打ち砕いてくれます。 ムルナウ監督のサイレント技法は完熟の域に達していて、登場人物の表情や仕草の捉え方の上手さと、画面の文字まで用いたサスペンスの盛り上げで引き締まった物語を一気に見せていきます。 1930年代のアメリカの工業製品も興味深く、麦の取り入れには動力こそ“馬力”ですが、自動コンバインで一気に袋詰めまで行っていたことや、鶯の自動人形や扇風機といった製品が庶民の手に届く程生産されていたこともわかります。 そして、農業の収穫期に渡り歩く季節労働者も活写されていて、後の「天国の日々」、「サイダーハウスルール」、「米」へと続く作品の原点ともなっています。 都会から嫁いできたヒロインの葛藤と焦燥を痛いほどの映像表現でハラハラさせるムルナウの傑作で、ラストは「サンライズ」と同様の昇華感覚が見事ですよ! ねたばれ? アメリカでも食べ物で遊んじゃいけないんだ!

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