狼は犬にはならない
- bakeneko さん
- 2011年6月23日 10時13分
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カザフスタンの作家アウエーゾフの短編「灰色の恐しきもの」の映画化で、少年と狼の子の出会いを通して、山岳地帯の貧しい環境で生きていく人間とその宿敵である狼の関係を一切の甘さを捨てて描いて、峻厳な現実を突きつけてくる力作であります。
まず最初に忠告ですが―本作は犬好きの方は観てはいけません(猫好きの人が「午後の曳航」や「ビフォア・ザ・レイン」を観てはいけないのと同じ理由です)。
あと犬好きが絶対観てはいけない映画の代表に「禁じられた遊び」もあります。
驚くほど何もない―カザフスタンの荒涼とした地域で羊を放牧して細々と暮らしている人間とそれを狙う狼の“共存し得ない”関係を、厳しい生存競争の論理で見せてくれる作品で、主人公と狼の仔の関係を通して、生き残る事が大変な環境では人間も動物も“友愛や相互理解”といった幻想は通用しないことを突き放した視点で描いています。
どんな手を使っても生き残るべく―甥をスパルタ式に鍛える叔父を、デルス・ウザーラにも出ていたシュイメンクル・チョクモロフが力演していますし、親友の思想犯の鷹使いや御祖母ちゃん、地主の息子等の人物造形は見事に厳しい環境を体現させています。
そして、生まれたてから成年までの狼の変化や生態も興味深く見せてくれますが、集団で羊や人を襲う映像は、“野性の凶猛さ”で“人間には飼い馴らせない自然”を垣間見せてくれるのであります。
人間世界自体が過酷で理不尽なことを示しながらも、同時に“自然を人間のセンチメンタリズムに引き込もうとする甘さと身勝手さ”も手厳しく指摘する硬派の作品で、(「仔鹿物語」と同様)“野性動物は家畜ではない”事を思い出させてくれる峻厳な映画であります(中学生になったら、ディズニー映画作品群に挟んで子供に見せましょう)。
ねたばれ?
生まれたての狼って黒いんだ!
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