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君がいた夏 (1988)

STEALING HOME

監督
スティーヴン・カンプマン
ウィル・アルディス
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3.84 / 評価:154件

人生を凝縮した素晴しい傑作

  • sna******** さん
  • 2018年9月29日 5時39分
  • 閲覧数 1085
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画の事を思い出すだけでウルウルします。
無駄がない秀逸なストーリーで映像表現やその他全て含めて素晴しい傑作であり隠れた名作です。
間延びしたシーンや不必要な場面を感じさせづ全体を簡潔にまとめ上げた手腕を感じます。
レンタルでしたが日本語版と、やっばりジョディ・フォスターの肉声を聞きたくてオリジナルで観ました。

でも人生経験が乏しかった20代までの自分ならこれほどこの作品に感動し得たのだろうか…
“2001年宇宙の旅“を若い頃に見てまるで理解できなかった自分が近年再見してその奥深さと先見性に驚嘆した自分がいました。
ある作品に何かを感じ得るのかと理解力、読解力は人生の経験値も影響するものでしょう。
本作で言えばアメリカの風俗や風景、アートに興味がある感性の人なら更に楽しめる内容だと思います。
私は映画の中には監督、脚本を中心として総合力を結集させた芸術作品がある物なのだと思っています。
映画の中のアメリカの風景がA・ホッパーやA・ワイエス、B・フュークスなどアメリカンアートの絵の様でありニューカラーの写真家が撮った様な夏の海辺の風景が輝いて印象的でした。
ホラー映画の恐怖映像が評価されてN.YのMoMAに収蔵されるのなら、この映画のアメリカその物と故郷の風景の中でケイティの弔い方を見つけ出した歓喜の表現を評価してこの近代美術館に収蔵されるべきだと思ってしまいます。
人が創って人を感動させうる物が芸術だと定義するならば間違いなくこの映画は芸術作品なんだと思います。

甘い思い出のある従姉の自殺と父の事故死。
異性に対する興味と憧れを絡めた事が人生を凝縮させていると思いました。
人には予期せぬ突然の死で別れが訪れるもので、その辛さをそれぞれの立場を慮って見て感情移入してしまいました。
ケイティの自殺だけでなく父親の事故死を絡めた事はこの映画の重要なメッセージなのでしょう。
私自身、友人を早くに亡くした事が響くのかもしれません。
ケイティは夫を亡くしたジミーの母に“子供にとって親を無くすより伴侶の死は辛いのよ”
と言って寄り添います。
でもケイティ、なぜ親より先に逝ってしまったの?
親にとっての娘の死はどうなんだい…?
と思ってしまうのですが、それでも絶望を乗り越えられない者はいます。
現実に自殺者の数とは日本においては交通事故による死者数よりも多いのです。
更に未遂者や自殺を考えた事がある人の人数も含めれば相当数になり、この映画の内容は特別な事ではなく誰にでも身近に起こりうる事なのだと思います。
そして映画の中の自殺したケイティが天真爛漫だった事がインパクトを与えています。

いろんな事を教えてくれる歳上で美しい従姉を演じるジョディ・フォスターの素晴しさは言うに及ばず、10代のアップルビーや10歳のビリー役が好演していました。

規則が嫌いでお転婆娘のケイティとオープンカーでドライブしてタバコを吸っているところを親に見つかり慌てて投げ捨てるシーンが大好きです。
悪びれないケイティの開放感全開の幾つかのシーンとジミーが見た最後の姿がストップモーションになる演出も良かったです。
親友の初体験もケイティのアドバイスがあったればこそでケイティの存在感を強調させていました。
彼女はモテる男としてビリーを成長させたくて女目線のアドバイスを送り続けます。
ビリーは破天荒な彼女が大好きで、それゆえ奔放な彼女の恋愛遍歴をやり過ぎだよ、と心配します。
そんな気持ちを互いが分かり合って好きだという自然な形で抱き合う。
従姉同士であれ、その流れになんの違和感も感じさせません。

大好きである事とは別に異性に興味を持ち始める思春期前の男子の感性と驚くような行動もジョディ・フォスターの魅力と相まって非常に上手く表現されていました。

遺書を残した彼女は確信を持ってビリーに遺灰を託した。
あの輝く夏の日々を共に過ごし夢を語った事を思い出してくれると信じて。
そしてケイティはビリーの手によって世界に羽ばたく夢を実現させた。
このクライマックスに至るストーリーと夏の日の映像表現が卓越しているのです。

10数年もケイティに再会しないまま彼女は自死してしまった。
それを機にバスに乗り、列車に乗り帰郷するジミー。
そしてケイティとの思い出の夏へ。
故郷に帰れば老いた母がいて親友や初体験の相手が暮らしている。
まさにスチーリングホーム。
原題は野球の本盗塁ですが帰郷も意味するのでしょう。
邦題も魅惑的でこのタイトルに惹かれて観ました。

これまでのマイベストは“カサブランカ”で一言でいえば主人公の男の魅力。
“2001年宇宙の旅”は宇宙に通じる輪廻。
そして人生を凝縮した本作が加わりました。
18年は不運続きで晩夏は駄目押しの病床。
人生最悪…
でも生きていたから遅ればせながら素晴しい映画に出逢えて幸せです。
来年も夏が来たらまた観たいです。

詳細評価

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