ここから本文です

フル・スロットル/烈火戦車 (1995)

烈火戦車/FULL THROTTLE

監督
イー・トンシン
  • みたいムービー 2
  • みたログ 22

2.00 / 評価:4件

王道(ベタ)×2の青春劇

  • lamlam_pachanga さん
  • 2011年2月24日 17時29分
  • 閲覧数 346
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

私が大好きな映画監督のひとりである、イー・トンシン。『つきせぬ想い』で一躍人気監督の仲間入りを果たした彼は、その後も人間の内面を描く物語を発表し続け、今日では香港映画界きってのストーリー・テラーとしての地位を築いています。個人的には、90年代後半以降低迷する香港映画界にあって、この人の確かな演出力がぎりぎりのところでその地盤沈下を食い止めてきた事実を考えれば、この10数年において、ジョニー・トーと並ぶ香港映画界を支えた功労者だと思っています(アンドリュー・ラウも加えるべきかも)。

とは言え、最近やたらとファン層を拡大している感のあるジョニー・トーや、元々ある程度のファン層を掴んでいるアンドリュー・ラウと比べると、イー・トンシンの演出ってのが地味なのは否定出来ません。

『つきせぬ想い』、『忘れえぬ想い』、『ワンナイト イン モンコック』、『プロテージ/偽りの絆』、『新宿インシデント』・・・日本公開された彼の作品は決して少なくはないですが、単純な知名度で言えば、ジャッキー・チェン主演の『新宿インシデント』が一番浸透している作品なのではないでしょうか。ですが、この監督のファンは、恐らくは『つきせぬ想い』や『忘れえぬ想い』、或いは『ワンナイト イン モンコック』辺りがお気に入りのはずです。

先にも書いた通り、イー・トンシンの特徴は人間の内面の描写にあります。香港映画界が娯楽性重視の風潮に囚われているせいか、彼の地の映画には、どうもキャラクターを描きこんだ作品ってのが滅多にありません。但し、イー・トンシンのそれは抽象的な描写が少ないせいか、どちらかと言えばかつてのリンゴ・ラム同様、丁寧で解り易い描写が主となります。

つまり、彼の映画の基本は、ストーリーにあります。

自分で書く脚本の大半は青春劇や人情劇で、最近はそこに犯罪映画の香りを加える割合が増してはいますが、この基本軸がずれることはまずありません。こけおどしの演出を好まず、愚直なまでに王道(ベタ)なストーリーを展開させる彼の映画は、往々にして凡作か傑作のどちらかにはっきりとわかれてしまうことが多く、時としてややご都合主義的な展開が目立つ時もあります。

この『フル・スロットル』は、言ってしまえば王道(ベタ)の青春劇。

誰もが認める最速ライダーのジョー(アンディ・ラウ)は、有力レース・チームのオーナーでもある実父と対立しているものの、いつの日かマカオGPでの優勝を夢見る青年。恋人イエ(ジジ・リョン)との仲もギクシャクしていたある日、デビッド(デビッド・ウー)と言う凄腕のライダーと知り合い、ふたりは意気投合。互いをライバルとしてマカオGPへの出場を誓うが、デビッドが父親のチームと契約したことでふたりの友情には亀裂が走る。ジョーのレースへの情熱が理解出来ないイエとの溝も深まり、ささくれ立つ心のまま街頭レースに赴くジョーは転倒事故を起こしてしまう・・・と言うのが、本作の大筋。

主人公がいて、障害と向き合い、それを克服していく過程でのキャラクターの成長、変化を描く、と言うのが、この手の映画の基本軸なわけですが、本作(と言うかイー・トンシン)の場合、この軸に忠実過ぎるのが売りでもあり、泣き所でもあります。

だから、この『フル・スロットル』も極めて類型的な映画と切り捨てることも出来るし、逆に極めて丁寧な物語と評することも出来る。

この辺は、結局のところ、この人のタッチが好きか嫌いかに左右されるのでしょう。

個人的には、この映画は別に傑作ではないし、正直、凡作の域を出るものではないと思います。あまりにも王道(ベタ)×2の展開を見せる物語にひき込まれることはなかったし、ジョーの成長過程、デビッドとのライバル関係、そしてイエとの関係の決着と、あれもこれもと欲張り過ぎて、結局はそのどれもが中途半端に終わった感も否めません。

但し、好きか嫌いかで言えば、私はこの人の映画(演出)が好きです。最も、それは個人的な好みの問題なので、それだけの理由で本作を声を大にして他人(ひと)へ薦めることは出来ませんが。

ただまあ、癖のない映画が好きな人には悪くないと思います。

少なくとも、癖のない香港映画を観たければ、イー・トンシンの映画がお薦めなのは間違いありません。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 勇敢
  • かっこいい
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ