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復讐のプレリュード (1995)

大冒険家/THE ADVENTURES

監督
リンゴ・ラム
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2.75 / 評価:4件

凋落のリンゴ・ラム

  • lamlam_pachanga さん
  • 2011年2月12日 19時58分
  • 閲覧数 380
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

映画監督がスランプに陥った時、正しい対処法と言うものはあるのでしょうか。

タランティーノは、「どんな巨匠にもスランプの危険性はある。それは個人的想い入れが強い映画が失敗した後に起こりやすい」、と語っています。確か、「『虚栄のかがり火』のデ・パルマがそうだ」、とも言っていました。

それが事実かどうかは解りません。ただ、どんな映画監督でもスランプに陥る可能性があるのは間違いないだろうし、私の場合、それを痛感したのはリンゴ・ラムのケースで、それを感じたのがこの映画なのです。

一般に、リンゴ・ラムの凋落はハリウッドでの体験が原因だと言われます。スタジオ主導の撮影方法に失望したのだと(具体的には『マキシマム・リスク』の編集権をスタジオに奪われた一件)。それも嘘ではないでしょうが、私は、(自慢でも何でもなく)最初から米国での失敗を予想していました。

何故なら、米国進出直前から、リンゴ・ラムの変化を感じていたから。

何故なら、その進出直前に、『復讐のプレリュード』を観ていたから。

私が大好きだったリンゴ・ラムは、『友は風の彼方に』で潜入捜査官の苦悩を、『いつの日かこの愛を』で犯罪の陰に咲く愛情を、そして『プリズン・オン・ファイアー』で受刑者たちの友情を描いた様に、常に「心の機微」に焦点をあてる監督でした。

ところが、撮影中にチョウ・ユンファとの衝突が報道された『フル・コンタクト』を境に、彼の映画からそれが消えてしまった。それまで一貫して登場人物の心情を描いてきた彼が、それを描くことを忘れていた。

『フル・コンタクト』で感じたその違和感は、この『復讐のプレリュード』で確信的なものに発展します。

(リンゴ・ラムの大ファンである私には辛い言葉ですが)『フル・コンタクト』を凡作とするならば、『復讐のプレリュード』は紛れもない駄作なのです。

思うに「復讐譚」と言うのは、映画的にとても都合の良い題材です。例えば、それを火傷するほどの高温に熱するのがジョン・ウーであり、青白い炎のまま魅せるのがジョニー・トー。単純(ジョン・ウー)と簡約(ジョニー・トー)の違いはありますが、演出家の嗜好を如実に反映させることの出来る題材のひとつだと言えます。

なのに、本来は「復讐譚」(であるはず)のこの物語には、リンゴ・ラムの嗜好が何も反映されていない。地味なエピソードの中でドラマを紡ぎ出す彼の作家性が、どこにも見当たらない。

端的に言えば、ドラマのない復讐譚。

これは単純に、物語として致命的な欠陥です。

別にリンゴ・ラムを擁護する気はないですが、一義的な責任は、脚本のシウ・ラウキンにあります。単純であるべき復讐譚なのに、彼はバカバカしいほどに複雑なプロットを準備している。

カンボジアの少年ヤンの眼前で両親が殺害される。叔父に引き取られたヤン(アンディ・ラウ)はタイ空軍のパイロットに成長するが、仇のレイ(チョイ・プイ)が地元の名士となっていることを知り、復讐を決意。一度は失敗するも、レイの愛人(ロザムンド・クワン)やその娘(ン・シンリン)を利用し、再び機会を窺う。

本来これだけで事足りる物語なのに、ゴチャゴチャと要らぬ要素がテンコ盛り。但し、それよりもまずいのは、この物語に、誰ひとり共感出来るキャラクターがいないこと。

本来、主人公(アンディ・ラウ)は観客の導き手になるべきなのに、中盤~後半の訳の解らない展開の中で癖のあるキャラに陥ってしまったのは、間違いなく脚本のミス。

そして、冴えないリンゴ・ラムの演出。

地味なカットを繋ぎ、素朴なエピソードを語る。

その繰り返しの中にキャラクターを描き、ドラマを生む。

それこそがリンゴ・ラムの演出術だったはずなのに、共感出来ないキャラクターたちと、無意味で下らないエピソードの連続では、当然ながら、そこにドラマは生まれぬまま。彼が「単なる復讐譚」以上の何かを描きたかったのは想像出来ますが、結果は、惨敗と言うほかありません。

本作撮了後、ハリウッドへ進出したリンゴ・ラム。

現在の彼は、事実上の引退生活を送っています。

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