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禁じられた遊び (1952)

JEUX INTERDITS/FORBIDDEN GAMES

監督
ルネ・クレマン
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4.35 / 評価:322件

死に囲まれた少女の魂はどこへ向かうのか?

今回取り上げるのは1952年のフランス映画『禁じられた遊び』。アカデミー名誉賞(後の外国語映画賞)とベネチア国際映画祭の金獅子賞(ちなみに前年に受賞したのが黒澤監督の「羅生門」)を受賞した。監督は名匠ルネ・クレマンで、監督の作品レビューを書き込むのは「太陽がいっぱい」「パリは燃えているか」に続き3作目。無垢な少女の目を通して戦争の愚かさを訴える、映画史上に残る名作だ。

日本では翌53年に公開され、この年のキネマ旬報ベストテンでは外国映画の1位に輝いている。主題曲は有名になりすぎた感もあるが、映画音楽について語るうえで欠かせない曲である。主人公の少女ポーレットを演じたのはブリジット・フォッセーで、彼女はこの一作で映画ファンの心に永遠に残ることになった。大人になってからの映画では「さらば友よ」「ラ・ブーム」を観たことがある。名作「ニュー・シネマ・パラダイス」の完全版にも主人公トトが思いを寄せる女性の役で登場していた。

本作の時代は1940年で、真珠湾攻撃よりも1年以上前の出来事である。冒頭は狭い道にひしめく避難民の群れが映される。その中でポーレットは両親と飼っている仔犬と一緒に自動車で逃げている。ポーレットの身なりは可愛らしいもので、それなりにお金持ちの家庭らしい。ドイツ軍の爆撃機がひっきりなしに飛来しては、避難民を狙って容赦なく爆弾を落としていく。
ポーレットの父親が運転する車はエンストしてしまい、このままでは道路が渋滞するのでやむなく車を道路脇に突き落とし、親子は最低限の物だけ持って徒歩で逃げる。戦時中の日本人も同じような経験をしたはずだが、戦争に負けるとはこういう事なのか。川に架かる橋を渡ろうとした親子を機銃掃射が襲い、両親はポーレットの目前であっけなく息絶えてしまう。

あまりにも残酷な運命だが、幼いポーレットは親の死をきちんと認識していないのが切ない。彼女の関心事は両親よりも死んだ仔犬なのである。川べりをさまよっていた彼女は、近所に住む農家の末っ子ミシェル(ジョルジュ・プージェリー)と出会う。この子は10歳くらいで、お祈りの文句を諳んじるなど一家の中でも知識があり、本作のもう一人の主役である。
身内の死に直面するのはミシェルも同様で、機銃掃射に怯えて暴走する馬を止めようとしたミシェルの兄は、腹を蹴られて大怪我を負う。自宅で療養していたが血を吐いて容体が急変し、彼もまた帰らぬ人となる。彼の死は今で言えば「戦争関連死」と位置付けられるだろう。この時代は現代とは比べものにならぬほど、突然の死が身近に存在していたのかも知れない。二人が『禁じられた遊び』にはまる素地があったわけである。

ポーレットは人気のない水車小屋の中に穴を掘り仔犬を埋める。仔犬だけでは寂しいだろうと言うので、ミシェルの協力を得てネズミや小さな虫や隣家のヒヨコなど、周囲に多くの小動物を埋めるようになる。そしてお墓を綺麗に飾り付けるため、兄を運ぶ霊柩車に付いた十字架をきっかけに墓場を荒らして十字架を奪うなど、死者を冒涜する行為に発展していく。
幼い頃に飼っていた小動物が死んで、庭の片隅にお墓を作った経験は誰しもあるだろう。しかし本作のように行為がエスカレートすることはない。現代の子供たちは他に興味を持つ対象がいくらでもあるからだ。ポーレットとミシェルの場合は、戦争で大量の死が身近にある異常さと、現代よりもずっと閉塞した環境がこのような行為に走らせたのだろう。遊びの中で大人の社会を模倣する二人の姿に、反戦のメッセージを見出すのは容易であろう。

戦災孤児となったポーレットが身を寄せるミシェルの一家は、基本的には親切な人たちだが、大人の社会の縮図と言える不和の種が潜んでいる。まず父親はお隣の家長と仲が悪い。自分の長男が不慮の事故で死に、出征していた隣家の長男フランシスが戦場を脱走して生還してくるため、ますます悪感情がエスカレートしていく。
ミシェルの窃盗を隣家の仕業と勘違いして、ついには長男の埋葬時に墓場の穴の中で喧嘩する始末。このシーンは笑えるが、国同士の戦争もこんなつまらぬきっかけで起こるという意味にも取れるのだ。ところがミシェルの姉とフランシスは恋仲で、父親同士の喧嘩を尻目にイチャついている。当事者にとっては深刻な戦争も、一歩引いて見ればバカバカしいということだろう。

最後にポーレットは孤児院に送られることになり、駅の雑踏がラストシーンとなる。抱き合う母子の姿を見て「ママ・・・」とつぶやくポーレット。この時やっと彼女は両親の死を実感して心の痛みを覚えたのだ。言葉を失ってしまうくらい悲しいシーンである。せめてこれからポーレットが逞しく生きて両親の墓を弔い、ミシェルと再会する将来があると信じたい。

詳細評価

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